労働法コラム⑥罪を犯した従業員を解雇できるか?

 重大事件で逮捕者が出ると、逮捕者の職場に記者が取材に行き、「まじめに働いていたのにビックリです。」などとコメントする様子をテレビでよく見ます。その際、テレビの映像から職場がわかってしまうケースがあります。鉄道会社の社員の痴漢や、報道関係者の盗撮など、職業倫理から悪質に見える事件では、会社名がばっちり出ることもあります。もちろん報道だけでなく、事件現場の近くの噂で知れ渡るということもあります。
 ところで、日本の法律では、有罪判決が確定するまで、逮捕されようが、起訴されようが、何年牢屋にいようが、罪の無い市民として扱われる建前になっています。とはいえ、一度逮捕されてしまえば、有罪だと思ってしまうのが普通です。そのため、逮捕者を出した会社は会社名が知られると、イメージダウンのおそれがどうしても生じてしまいます。
 この無罪として扱うという建前と、会社のイメージダウンを避けるという現実的な問題に折り合いをつけることが、労働法上、中々難しいのです。
 会社に迷惑をかけたということで懲戒解雇したい場合もあるでしょう(もちろん就業規則等で懲戒事由が定められていることが前提ですが)。会社の金銭を横領した場合などは、イメージダウン以前の問題で、そもそも会社自体が被害者ですから、懲戒解雇しやすい例ではあります。また、先にも述べた鉄道会社の社員による電車内での痴漢行為は、日頃、痴漢防止のための活動をしている会社のイメージを著しく下げる違法行為として、懲戒解雇が認められやすい例といえます。
 他方で、会社や会社の業務と全く関係ない犯罪行為を理由に、懲戒解雇することは裁判例でも認められにくい傾向があります。「会社に迷惑をかけた」とどの程度までいえるのかが懲戒解雇ができるかどうかの分岐点になるでしょう。
 懲戒解雇ができない場合には、より軽い懲戒処分を検討していくことになります。また、法律的な問題というより、現実的な問題として、どうしても辞めてもらいたいという場合もありえます。その場合は、懲戒解雇ではなく、退職を勧奨するなどの手段をとることになります。このとき、従業員の自由な意思を奪う違法な退職勧奨にならないよう注意する必要があります。
 ところで、これまで厳しい処分に関する話ばかりしてきましたが、弁護士として様々な刑事事件を見聞きし関わった経験からすると、罪を犯した従業員でも退職させない職場が意外とある気がします。また懲戒が当然という場合であっても、きちんとした手続が社内で踏まれることが大事だと感じます。
 

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