労働法コラム⑦サッカー選手は労働者か?

 サッカーワールドカップ,日本代表8年ぶりのベスト16進出ですね。対ポーランド戦のパス回しについて色々な議論が出ましたが,私としては西野監督の「責任は自分にある」という発言から,労働法上のサッカー選手の地位が気になりました。

 

 サッカー選手をはじめとして,プロスポーツ選手は,チームからお金をもらってプレイしています。見方によってはサラリーマンと同じようにも見えます。

 

もしサッカー選手が労働基準法(労働契約法)上の労働者だとすれば次のような事態が想定されます。居残り練習をしていた選手から「残業代を払って下さい。」と言われて,ものすごい未払い残業代を請求される。「来年は契約しないよ。」と監督に告げられた選手が「それは雇止め法理に違反していませんか?」。サッカー選手11人全員が労働者なら,サッカーチームは常時10人の労働者がいることになるので就業規則を定めなければならなくなる? これは何となく違和感がありますね。

 

関連して,1980年代にはプロ野球選手の労働者性が事件になっていました。こちらは労働組合法上の労働者に該当するかどうかが争われた事件です。今でもプロ野球選手の労働組合があります。労働組合法上の労働者は割と広く認められているのです。

 

他方で,労働基準法上の労働者は使用従属関係の有無で決定されます。使用従属関係は仕事の諾否の自由,業務指示の有無,代替性の有無等で見ます。

 

具体的に見ていきましょう。サッカー選手はいつ誰とどこで試合するか自分では決められませんから,使用従属性が強そうです。プレイ中は監督の指示に従っているので,ここでも使用従属性がありそうです。冒頭の西野監督の発言はまさに指示者だからこその発言でしょう。代わりになる人がいるということになると,従属性は弱まりますが,サッカー選手はベンチに交代要員がいますよね。それに一般企業でも余人をもって代えがたい人はいますが,だからといって労働者性は否定されません。このように見ると,なんとなくですが,労働者っぽい雰囲気がありますね。

 

しかし,他方でサッカー選手は個人個人がスターであり,スターのプレイはそのスターにしかできません。しかも,監督の指示も,一般的な仕事の指示に比べれば漠然としていて,各選手の裁量は大きそうです。そして何より試合中はさておき,練習や身体作りは各選手に任されています。こうしてみると,演奏家や画家のように,注文主から指示を受けて仕事をする請負人というのが実質のように思えます。請負人であれば,労働者性はほぼ否定されたと言って良いでしょう。

 

労働法上の労働者は立場が弱いから保護しなければならないという理念があります。スターサッカー選手の場合はその点であまり気にされないのかもしれません。そもそもサッカーファンは誰もこんなこと気にしていないのでしょうか……。
 

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