労働法コラム①過労死問題

 
 電通社員の自殺事件もあり,過労死という問題は随分と注目を集める話題です。日本の過労死は,海外でも“karoushi”として有名だそうです。損害賠償や強制捜査といった多くの法律上の問題も巻き込んでいるので,弁護士としても注目の事件です。
 
 過労死は,法律上の定義はありませんが,一般的には,長時間労働が原因の死亡をいいます。短時間労働でも,心身に異常な負荷をかける労働で亡くなってしまった場合は過労死です。

 ニュースでは,労働者の過労死が問題にされることが多いです。しかし,使用者も過労死してしまうことはあります。使用者が過労死した場合は,訴訟等にならず,表に出にくいだけです。

 過労死は,遺族や会社,同僚,使用者に精神的な苦しみを与えることはもちろん,経済的にも大きな損害を与えます。会社にとっては,遺族から数千万円単位の慰謝料を請求される可能性もあり,経済的な損害だけ見ても,過労死が抱えるリスクは無視できません。特に,使用者が過労死した場合,命の価値は平等とはいえ,抱えていた従業員を路頭に迷わせてしまうなど,より深刻な事態を生じさせかねません。過労死は多方面に対し重大な影響を与えるのです。

 したがって,過労死は,企業として,何としても避けねばならない事態です。

 過労死を避ける何よりも有効な対策は,労働時間を減らすことです。月に80時間を超える残業を2か月以上続ければ,過労死する危険が目に見えて高まります。月に100時間を超える残業を1か月続けても同じくらい危険が高まります。
 
 ただ,「労働時間を減らせ減らせと声高に言われても,締切,納期,お客様は待っちゃくれないわけで,家族や従業員を食わせるために,自分が生きていくためには残業は仕方がない……。」といった反論のような,諦めのような言葉が(うちの所長弁護士からも)聞こえてきそうです。

 しかし,我々は,必ずしも働くために生きているわけではありません。多くの人は,生きていくために働いているので,死をもたらすような労働を自らに課すことは本末転倒といわざるをえません。早め早めに仕事を終わらせる,仕事上の無駄を省く,電話に出ない時間を作るなど,労働時間を減らすちょっとした工夫を職場全体で積み重ねていくことが,やはり大事なことだと思います。

(執筆 弁護士田中良太)


 
 

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