メンタルヘルス不調者への法的対応の実務 セクハラへの対策

開催日時:平成28年4月27日

講師:弁護士 倉橋 芳英  弁護士 田中 良太

セクハラへの対策

1.セクハラとは

男女雇用機会均等法11条1項
「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け,または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」
⇒①職場における,②性的言動によって,③被害が発生
 
性的な言動の例
(1)性的な内容の発言
・性的な冗談をいう,からかう
・食事やデートに執拗に誘う
・性的な噂を流布する
・個人的な体験談を話したり聞いたりする
(2)性的な行動
・肩をもむなど,不必要に体に接触する
・ヌードポスターを貼る,ヌード画像の出るスクリーンセイバーを使用する。
・わいせつ図画を配布したり,掲示したりする。
・ヌード雑誌をこれみよがしに読んだりする。
 
 
性的言動のあたるか微妙な事例
・「子どもはまだか」などと繰り返し尋ねる。
・主席で,男性社員の隣に座ることや,デュエット,お酌を強要する。
・「女の子」,「おばさん」などと呼ぶ
⇒もっとも,職場環境を良好に保つために禁止すべき。
 
安全配慮義務違反とされないための対策(厚労省通達)
①セクハラに対する方針の明確化及び周知・啓発
②労働者からの相談や苦情に対し,その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備
⇒相談・苦情受付窓口を設置するなど
③相談の申出があった場合に,事実関係の迅速かる正確な確認及び適切な対処
⇒・双方からの事実確認
・就業規則に基づき加害者を処分
・加害者の配置転換(被害者の配置転換は,被害者自身が真に希望した場合のみ)


パワハラへの対応
◆定義
法令や裁判例上,明確な定義はないが・・・
厚労省の報告の中に定義がある。
「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(上司から部下,先輩から後輩,同僚間,更には部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものを含む)を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
 
◆パワハラへの対応
・パワハラに対する指針の明確化,周知・啓発
・管理職と部下の定期的な面談
・専門の相談窓口の設置
・相談があった場合の適切な対応
⇒・双方からの事実関係の確認
・就業規則に基づく処分
・就労環境の整備(加害者の配置転換など)
 

2.メンタルヘルス発症後の対応

①業務軽減措置
②休職
③退職・解雇
 

2.1業務軽減措置

厚労省のガイドライン(「健康診断の結果に基づき事業者が講ずべき 措置に関する指針」)
①医師等から就業上の措置について,その必要性の有無,講ずべき措置の内容等に関する意見を聴くこと②労働者本人から意見を聞いて,十分な話し合いを行い,本人から了承が得られるようにすること③職場の管理監督者に対して,就業上の措置の目的,内容等について理解が得られるように十分説明すること④健康状態の改善が見られた場合には,医師等の意見を聴いた上で,通常の勤務に戻す等適切な措置を講ずること
 
◆業務軽減措置の内容
・労働時間の短縮
・出張の制限
・時間外労働の制限
・労働負荷の制限
・作業の転換
・就業場所の変更
・深夜業の回数の減少
・昼間勤務への転換など
 

2.2休職

◆私傷病休職制度の目的
⇒一定期間就労義務を免除して療養に専念させて解雇を猶予する
⇒「入口」,「中頃」,「出口」の3つの時点の措置を就業規則で定めることが肝要
 
◆入口の時点の規定
①休職制度の事由・目的
②休職の要件
③休職制度の適用範囲
④休職の手続
などを就業規則に定める。
 
私傷病休職の適用の要件
(1)有給休暇の消化,一定期間の欠勤
⇒私傷病による欠勤が一定期間継続することが必要
(2)就労が不可能又は不適切であること
(3)療養に専念することにより,復職の見込のあること
⇒私傷病制度の目的が療養に専念させることにより復職させることであるから,復職の可能性があることが不可欠
⇒復職の可否は医学的な判断なので,医師の意見を聴くことが極めて重要
 
◆中頃の時点の規定
⑤休職の期間
⑥休職中の扱い
など
 
休職中の対応
就業規則中に,次の事項を規定しておくべき。
(1)療養専念義務があること
(2)休職中の連絡・報告について
(3)定期的な診断書の提出
(4)期間途中の出勤等について
 
◆出口の規定
⑦復職についての手続と要件
⑧退職又は解雇の取扱い
⑨休職期間の延長
⑩再度の休職の可否など
 
復職の可否
⇒医師の診断又は意見に基づき判断する。
(もっとも,主治医の判断に拘束されるわけではない。)
⇒主治医の判断をきくために,労働者本人の同意を得て,使用者が主治医に診断の内容について確認できるような規定を設けることが必要
⇒医師が労働者の勤務実態をどれだけ正確に把握していかを確認する。
 
その他の規定
(1)休職期間の延長の規定
(2)復職前のリハビリ等の措置についての規定
⇒試験出勤(出勤としては認めない),リハビリ出勤(出勤として認める)などの規定を設ける
⇒使用者は,リハビリ出勤を認める義務はない。
 

2.3退職・解雇

①休職期間満了による退職・解雇
②解雇(休職期間なし)
③退職(休職期間なし)
 
2.3.1休職期間満了後の退職・解雇
◆休職期間満了による退職の法的性格
⇒自動退職か解雇
→就業規則にいかに定めるかによる。
⇒両者の違い
→解雇の場合は,休職期間満了の30日前に解雇予告手当を支払うか,解雇予告手当を支払う必要がある。
⇒自動退職の場合も解雇の場合も「治癒していない」ことが労働契約終了のためには,必要となる。
 
◆治癒したか否か
⇒「治癒」とは,原則として,従前の職務を通常の程度に行い得る健康状態に回復したこと
→もっとも他に配置することのできる部署があり,労働者の申出がある場合には,雇用契約を終了させることはできないという内容の裁判例が多くある。
⇒∴他の職務や業務を一時的に軽減した業務への配点の申出があった場合には,それらの業務に従事させることができるかを検討したうえで,治癒の判断をする必要がある。
 
.3.2解雇
◆留意点
①業務上疾病の解雇制限期間の規制に反しないか
②解雇予告規制に反しないか
③解雇権濫用規制に反しないか
 
◆業務上疾病の解雇制限期間
・症状固定までは,解雇できない(労基法19条1項)
・症状固定後,30日を経過すれば解雇できる。
⇒もっとも,精神疾患の場合は,症状固定時期の判断が困難
・症状固定をしていない場合でも,打切補償(労基法81条)を支払えば,解雇は可能(3年経過して傷病補償金の支給を受けた場合は,打切補償があったものとみなされる。)
 
◆解雇権濫用法理の規制
・解雇のハードルは相当に高い。
・解雇が有効になるには,精神疾患が相当程度に重く,治療により回復し復職することが見込めないくらいの事情が必要。
・このような事情がない場合には,まずは休職をさせるなどして解雇回避措置をとったうえで,専門医の判断を聴いて解雇を検討した方が良い。
 
2.3.3退職
◆退職勧奨のリスク
①退職の意思表示に瑕疵があると判断されるリスク
②退職勧奨行為が不法行為であるとして損害賠償請求されるリスク
 
◆留意点
①脅迫・詐欺にあたるような退職勧奨を行ってはならない。
⇒1回の時間,頻度,立ち会う者などの人数に配慮する。
②精神的に不安定な状態にあることに対する配慮
⇒・数回に分けて説明する
・退職要求の書面を交付して第三者への相談を可能にする
・退職勧奨から退職まで一定の時間的猶予を与えるなど
③退職勧奨に応じた動機・理由を聴き取って記録に残しておく。

セミナー実績

開催日時 セミナー内容(クリックで詳細に飛びます。)
2018.07.12 バイク事故を巡る知っておくべき交通事故対応セミナー
2017.10.29 治療院向けセミナー 患者・スタッフ満足度UP 生産性向上経営実現セミナー
2017.10.24 保険代理店向けセミナー 相続セミナー
2016.11.15
2016.11.15 経営者・人事担当者向けセミナー 第1部 パワハラ・セクハラセミナー
2016.10.08 保険代理店向けセミナー ~人身事故 損害額の考え方~
2016.08.28 交通事故患者対応セミナー
2016.04.27 メンタルヘルス徹底対処法セミナー ~メンタルヘルス編~
2016.04.27 メンタルヘルス徹底対処法セミナー ~セクハラ編~
2015.05.20ほか マイナンバー制度 ~事業者の法的リスクと対策~
2015.02.28ほか 真の被害者救済交通事故業務改革セミナー2015
2014.11.16 全国の交通事故分野での注目事務所によるパネルディスカッション
2014.02.08 医療現場におけるクレーム対応の実務
2013.12.21 中小企業経営者に対する問題社員への対応アドバイスの仕方
2013.08.10 医療保護入院をめぐる法律問題
2013.07.20
2013.04.23 安全配慮義務違反と使用者責任
2012.12.21 企業経営における労務管理の重要性について
2012.11.24 精神保健福祉士と弁護士との連携について
2012.02.02 原発事故の損害賠償請求について(事業者向け)
2012.12.08 原発事故の損害賠償請求について(事業者向け)
2012.10.12 原発事故の損害賠償について(個人向け)


 

大分みんなの法律事務所


〒870-0026
大分市金池町二丁目1番3号
レインボービル5F

TEL097-574-7225 / FAX 097-574-7325

-->