最終更新日2025.10.1(公開日:2025.10.1)
監修者:弁護士法人 大分みんなの法律事務所 代表 倉橋芳英弁護士
音声でも解説をご用意しています。
「借金の返済が遅れるとブラックリストに載る」という言葉を耳にして、不安を感じていませんか? そもそも「ブラックリスト」というものは世の中に存在せず、これは、信用情報機関と呼ばれる組織のデータベースに事故情報(ブラック情報)が登録される状態を指す俗称です。
この状態になると、ローンが組めなくなったり、クレジットカードが使えなくなったりと、日常生活にさまざまな影響が出ることがあります。しかし、ご安心ください。事故情報は一度登録されても、永遠に残り続けるわけではありません。一定期間が経過すれば抹消され、信用を回復する道は必ず開かれます。
この記事では、「借金のブラックリスト」について、その正体、登録される原因、生活への影響、そして信用を回復するための具体的な「消し方」や対処法について詳しく解説します。あなたの不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すための情報を提供しますので、ぜひ最後までお読みください。

「借金のブラックリスト」はなぜ誤解されやすい?その本当の意味を解説
多くの人が「ブラックリスト」という言葉を聞くと、「要注意人物のリストが存在する」と想像しがちです。しかし、実はそのような名のリストは存在しません。私たちが「ブラックリストに載る」と表現する状態は、正確には「信用情報機関」のデータベースに「事故情報(ブラック情報)」が登録されることを指します。
事故情報とは、借金の返済を滞納したり、債務整理を行ったりした情報のことです。消費者金融などの金融機関は、この事故情報が登録されている人に対して「お金を貸しても返してもらえないかもしれない人」と判断します。その結果、お金を貸し渋る状態になることを、俗に「ブラックリスト」と呼んでいるのです。
1. 信用情報機関とは?3つの機関と情報共有の仕組み
日本には、個人の信用情報を収集・管理・提供する3つの主要な信用情報機関が存在します。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
主に銀行や信用組合などが加盟しており、延滞、不渡り、代位弁済、強制回収手続、破産や個人再生などの官報情報が登録されます。
日本信用情報機構(JICC)
主に消費者金融や貸金業者が加盟しており、延滞、債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申し立てなどが登録されます。
シー・アイ・シー(CIC)
主にクレジットカード会社や信販会社が加盟しており、延滞、保証履行、破産手続開始といった「異動」情報や自己破産情報が登録されます。
これら3つの信用情報機関は、「CRIN(Credit Information Network)」というネットワークで相互に結ばれており、さらにJICCとCICは「FINE」というネットワークでも情報を共有しています。そのため、いずれか一つの機関に事故情報が登録されると、他の全ての信用情報機関でも情報が共有されることになります。これにより、金融機関は顧客の信用状況を総合的に把握し、与信判断に利用します。
2. どのような状況でブラックリストに載ってしまうのか?
信用情報機関に事故情報が登録される主な要因は以下の通りです。
延滞・滞納
借金の返済や代金の支払いを長期にわたって(目安として61日以上または2~3ヶ月以上)滞納したり、繰り返し支払いが遅れたりすると登録されます。数日程度の遅れであればすぐに登録されることは少ないですが、注意が必要です。
代位弁済
ローンなどで保証会社を利用している場合、本人が返済不能に陥ると、保証会社が代わりに一括で返済することがあります。この代位弁済が行われると、その事実が事故情報として登録されます。
債務整理
任意整理、個人再生、自己破産など、借金問題を法的に解決するための手続を行った場合も、事故情報が登録されます。弁護士や司法書士が債務整理を受任して受任通知を発した場合、JICCでは情報登録されますが、CICやKSCでは直接の登録はありません。ただし、債務整理開始前にすでに3ヶ月以上の延滞が発生していたり、手続後に延滞が続いたりすれば、延滞情報として登録されます。
クレジットカードなどの強制解約
長期にわたる支払いの滞納により、クレジットカード会社から強制的に契約を解除されると、事故情報が登録されます。
過払い金請求(残債がある場合)
利息制限法に基づいて過払い金が発生している場合でも、まだ借金の残高がある状態で過払い金請求を行うと、事故情報が登録されることがあります。ただし、残債がなければ登録されません。
申し込みブラック
短期間に複数の金融機関へローンやクレジットカードの申し込みを繰り返すと、「お金に困っている」と判断され、審査に通りにくくなります。この申し込み履歴も信用情報機関に約6ヶ月間記録されます。
携帯電話・スマートフォンの端末代滞納
携帯電話やスマートフォンの端末代を分割払いで購入し、その支払いを長期間滞納すると、信用情報機関に事故情報として登録され、「携帯ブラック」と呼ばれる状態になります。
ブラックリストに載るとどんな悪影響がある?生活への具体的な影響
ブラックリストに載っても、会社や学校に知られることはなく、対人関係に直接的な支障が出ることはほとんどありません。しかし、お金を借りることや信用取引に関する以下のような悪影響が生じます。
1. ローンやキャッシングが利用できなくなる
ブラックリストに載ると、住宅ローン、マイカーローン、教育ローンなどの各種ローンを新たに組むことが非常に困難になります。これは、金融機関がローン審査の際に信用情報機関に情報を照会し、事故情報がある場合は「返済能力に問題がある」と判断するためです。特に住宅ローンは借入額が大きいため、審査はより厳しくなります。
また、急にまとまったお金が必要になった際に便利なクレジットカードのキャッシング機能も利用できなくなります。カード会社は利用者の返済能力を定期的にチェックしており、事故情報が判明すると利用が停止されます。
2. クレジットカードが新規で作れず、既存カードも使えなくなる
ブラックリストに載っている間は、新たなクレジットカードを申し込んでも、審査に落ちてしまいます。さらに、すでに持っているクレジットカードも、カード会社が定期的に信用情報をチェックしているため、強制的に解約されたり、利用できなくなったりする可能性が高いです。これにより、ETCカードなど、クレジットカードに付帯するサービスも利用できなくなる可能性があります。
3. 携帯電話・スマートフォンの分割購入や賃貸契約が難しくなることも
意外な落とし穴として、携帯電話やスマートフォンの端末代を分割払いで購入できなくなることがあります。端末の分割払いもローンと同じ仕組みになっているため、信用情報機関への照会によって審査が通らなくなるのです。どうしても購入したい場合は、端末代を一括で支払う必要があります。
また、賃貸マンションやアパートを借りる際に、入居審査に通らない可能性も出てきます。特に、家賃をクレジットカード払いに設定している物件や、家賃保証会社の利用が義務付けられており、その保証会社が貸金業も営んでいるような信販会社である場合、入居審査時に信用情報がチェックされるおそれがあります。
「借金のブラックリスト」を消す方法は?期間と例外的な解除条件
一度ブラックリストに載ってしまった情報を、債務者側から強制的に「消す」という直接的な方法は、原則として存在しません。基本的には、信用情報機関に定められた登録期間が経過し、情報が自動的に抹消されるのを待つことになります。
しかし、例外的に情報を削除できるケースや、削除までの期間を早めるための方法は存在します。
1. 事故情報は一定期間が経過すれば自動的に抹消される
事故情報は、一度登録されても永久に残るわけではありません。信用情報機関や事故の原因によって期間は異なりますが、おおよそ5年から10年が経過すれば、自動的に抹消されます。
具体的な期間の目安は以下の通りです:
延滞・滞納
延滞を解消し、完済してから約5年間。
代位弁済
代位弁済が行われた日から約5年間。
債務整理
- ・任意整理: 完済後約5年間。
- ・個人再生: 手続後約5年~7年間。KSCでは5年~7年程度。
- ・自己破産: 手続後約5年~7年間。KSCでは官報情報として10年間登録される可能性があります。
- ・※2022年11月4日以前に債務整理した場合は、5~10年程度となる可能性もあります。
申し込みブラック
申し込み履歴は、約6ヶ月間記録されます。
これらの期間はあくまで一般的な目安であり、個別の状況によって前後する可能性があるため、注意が必要です。
2. 間違った情報が登録されていた場合は削除を求められる
ごく稀に、クレジットカードの利用料金を滞納したことがない、ローンも借りていないといった状況でも、審査に落ちることがあります。この場合、信用情報機関に誤って事故情報が登録されている可能性があります。
このような場合は、まず信用情報機関に情報開示請求を行い、自分の情報がどのように登録されているかを確認できます。情報開示は、KSCは郵送のみですが、JICCとCICは窓口、ネット、スマホアプリなどでも対応しています。
開示された情報が事実と異なる場合は、その情報を登録した金融機関や貸金業者に連絡し、情報の訂正や削除を求めることができます。借入先の金融機関がなかなか応じない場合は、信用情報機関に伝えて調査を依頼することも可能です。信用情報機関の調査により誤りが判明すれば、当該事故情報は削除されます。
3. 時効を援用することでブラックリストを解除できる可能性
消費者金融などからの借り入れは、最後の取引日(最後に支払った日)から5年が経過すると時効となります。時効が成立すれば支払いの義務はなくなりますが、単に期間が経過しただけでは時効は成立しません。時効を確定させるためには、債務者が債権者に対して「時効の援用」を行う必要があります。
時効の援用とは、時効の完成を主張し、相手に通知することです。これにより、信用情報機関から事故情報を抹消してもらうことが可能になります。時効援用後、事故情報が抹消されるまでには1ヶ月~1年程度かかるのが一般的です。
ただし、時効期間が経過する前に債権者から訴訟を起こされたり、裁判所から支払督促申立書などが届いたりした場合は、その時点で時効のカウントがリセットされるため注意が必要です。法的手続きが終了してから再度時効期間(10年など)が経過しなければ、時効を援用できないこともあります。
時効の判断は専門知識を要するため、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、時効の起算日や時効期間を正確に計算し、時効援用通知書の内容証明郵便での送付など、適切な手続きをサポートしてくれます。これにより、ミスをするリスクを減らし、確実に時効を成立させることが期待できます。
4. 「ブラックリストから削除します」という業者は詐欺!
「手数料を支払えば事故情報を消せる」「ブラックリストからあなたの事故情報を消します」などと謳って金銭を要求する業者には絶対に注意してください。信用情報機関は、お金を渡して事故情報を削除してもらえるようなところではありません。
これらの業者の多くは詐欺であり、実際には登録抹消期間が経過するのを待って、それを自分たちの成果としている場合もあります。このような甘い言葉に騙されて依頼しても、意味がないどころか、さらなる金銭的被害に遭う可能性があります。少しでも不審に感じたら、消費生活センターや警察に相談しましょう。
また、信用情報機関のブラックリストとは別に、個々の金融機関や貸金業者が社内で独自に顧客情報を管理しているケースがあり、これを「社内ブラック」と呼びます。社内ブラックの情報は半永久的に消えないとされており、たとえ信用情報機関の記録が消えたとしても、その会社やグループ会社では新たな借り入れやクレジットカードの作成が困難になることがあります。その場合は、別の金融機関への申し込みを検討する必要があります。
ブラックリストに載っている間の賢い対処法とは
ブラックリストに載っている期間は、新たなローンやクレジットカードの利用が制限されるため、不便を感じるかもしれません。しかし、この期間を乗り切り、信用を回復するための賢い対処法があります。
1. 借金を一括返済・計画的に支払うことで信用回復を早める
事故情報の登録期間は、完済日から起算されるケースが多いため、原因となった借金をできるだけ早く完済することが、ブラックリストからの早期脱出につながります。まとまったお金がある場合は一括返済を検討するのも一つの方法です。
債務整理(任意整理や個人再生など)を利用した場合も、減額された残債を計画的に弁済し、返済期日を絶対に遅れないように守ることが重要です。きちんと期日通りに返済していれば、事故情報が消える前であっても、個別に返済能力を考慮して貸し付けを検討してくれる金融機関が出てくる可能性もあります。
2. クレジットカードの代わりにデビットカードなどを活用する
ブラックリストに載っている間はクレジットカードが使えませんが、代替手段を活用することで、日常生活の不便を軽減できます。
デビットカード
銀行口座に紐づいており、利用額が即座に口座から引き落とされる仕組みです。信用情報の審査なしで発行されるため、ブラックリストに載っている期間中でも作成・利用が可能です。MastercardやVISA、JCBなどの主要な決済方法に対応しているため、クレジットカードと同様に利用できます。
プリペイドカード
事前に現金をチャージして利用するカードです。こちらも信用情報の審査が不要で、使いすぎを防ぐこともできます。
スマートフォン決済(前払い式)
QRコード決済や非接触型決済など、事前にチャージするタイプのスマホ決済も、ブラックリストの状態に関わらず利用できます。
家族名義のクレジットカードの家族カード
本会員の信用情報に基づいて発行されるため、本人がブラックリストに載っていても利用できる可能性があります。ただし、利用代金は本会員に請求されるため、使いすぎには十分に注意が必要です。
現金主義の徹底
日常の買い物は現金決済を基本とし、支出を収入の範囲内に抑えることで、新たな借金のリスクを避けることができます。
3. むやみに新たな借り入れや審査の申し込みをしない
ブラックリストに載っている期間中に、むやみにクレジットカードやローンの審査に申し込むのは避けましょう。審査に落ちたという情報も約6ヶ月間信用情報機関に記録されてしまい、返済能力にさらに不安があると判断され、かえって信用回復が遠のく可能性があります。まずは、信用情報が回復するまで待ち、自身の信用情報機関への開示請求によって事故情報が消えていることを確認してから、再度申し込むことをおすすめします。
信用回復への近道:弁護士に相談するメリット
借金の返済に困り、すでにブラックリストに載ってしまっている、あるいは今後載る可能性があると感じているなら、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
最適な債務整理方法の提案
弁護士は、あなたの借金の状況や収入、資産などを詳細に聞き取り、任意整理、個人再生、自己破産など、複数の債務整理方法の中から、あなたの状況に最も適した解決策を提案してくれます。これにより、借金が減額されたり、免除されたりすることで、生活を立て直し、根本的な解決につながります。
時効援用手続のサポート
借金に時効が成立する可能性がある場合でも、個人で適切に手続を進めるのは非常に難しいものです。起算日を誤って債務を認めてしまい、時効がリセットされるといったリスクもあります。弁護士に依頼すれば、時効の専門知識を活かして正確な計算を行い、法的に有効な時効援用通知書を作成・送付してくれます。
債権者との交渉・手続代行
債務整理の手続は複雑で、債権者との交渉や多数の書類作成が必要です。弁護士が介入することで、これらの交渉や煩雑な手続をすべて任せることができ、精神的な負担を大きく軽減できます。弁護士が受任通知を送付すると、債権者からの直接の取り立てが止まります。
信用回復への具体的なアドバイス
債務整理後の信用回復期間中の生活の送り方についても、具体的なアドバイスを受けることができます。
無料相談の活用
多くの法律事務所では、借金問題に関する初回相談を無料で実施しています。まずは気軽に相談し、現状を整理し、解決策の提案を受けることから始めてみましょう。
借金問題は一人で抱え込まず、専門家である弁護士に相談することが、信用回復への最も確実で早い近道となります。
まとめ:借金のブラックリストと向き合い、前向きに信用回復を目指す
「借金のブラックリスト」とは、実際に存在するリストではなく、信用情報機関に事故情報が登録された状態を指す俗称です。この状態になると、新たなローンやクレジットカードの利用が難しくなるなど、生活に様々な不便が生じます。
しかし、事故情報は永遠に残るものではなく、原因となった借金を完済し、一定期間(おおよそ5年~10年)が経過すれば自動的に抹消されます。また、万が一、登録情報が間違っていたり、借金が時効を迎えている場合は、専門家と協力して情報の削除や時効援用の手続を進めることが可能です。
ブラックリストに載っている間は、デビットカードやプリペイドカード、スマホ決済などを活用し、現金主義を徹底することが賢明な対処法です。そして何よりも大切なのは、これ以上借金を増やさず、現在の借金の返済に集中し、計画的に完済を目指すことです。
もし借金の返済が困難で、この状況から抜け出すのが難しいと感じているのであれば、一人で悩まずに弁護士に相談してください。弁護士は、あなたの状況に合わせた最適な債務整理の方法を提案し、複雑な手続きをサポートすることで、借金問題の根本的な解決と、信用回復への着実な一歩を支援します。まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの未来のために、今すぐ行動を起こしましょう。