最終更新日2026.1.6(公開日:2026.1.6)
監修者:弁護士法人 大分みんなの法律事務所 代表 倉橋芳英弁護士
本記事のポイント
- 1.個人再生は借金を大幅に減額できるが、信用情報への影響や手続きの複雑さなどデメリットも存在する
- 2.住宅を残せる最大のメリットがある一方で、すべての人が利用できるわけではない
- 3.デメリットを正しく理解し対策を講じれば、人生再建の強力な手段として活用できる
「個人再生を検討しているけど、デメリットが心配で踏み切れない…」そんな悩みを抱えていませんか。
個人再生は借金を大幅に減額しながら、マイホームを守れる可能性がある優れた制度です。しかし、メリットばかりに目を向けて手続きを始めると、思わぬデメリットに直面して後悔することもあります。
本記事では、個人再生の具体的なデメリットを包み隠さず解説します。手続きの複雑さ、費用、期間、生活への影響まで、実際の事例を交えながら詳しく説明します。この記事を読めば、個人再生があなたに本当に適した選択肢なのか、客観的に判断できるようになります。

個人再生とは?基本的な仕組みを理解する
個人再生の法的な定義
個人再生は、正式には「民事再生法に基づく個人債務者の再生手続」といいます。簡単に言えば、裁判所に申し立てて借金を大幅に減額してもらい、原則3年(最長5年)で分割返済する制度です。
たとえば500万円の借金がある場合、個人再生を利用すれば100万円に減額され、それを36回払いで返済するイメージです。返済が完了すれば、残りの400万円は法的に支払い義務がなくなります。
自己破産と違って「借金をゼロにする」のではなく「大幅に減額して計画的に返済する」点が特徴です。
2つの手続き:小規模個人再生と給与所得者等再生
個人再生には2種類の手続きがあります:
小規模個人再生:
- ・最も一般的な手続き
- ・債権者の過半数の同意が必要(債権額ベース)
- ・減額幅が大きい
- ・個人事業主や会社員など、幅広く利用可能
給与所得者等再生:
- ・サラリーマンや公務員など安定収入がある人向け
- ・債権者の同意不要
- ・減額幅が小規模個人再生より小さくなる場合がある
- ・可処分所得(手取り収入から生活費を引いた額)の2年分以上の返済が必要
多くのケースでは、減額幅が大きい「小規模個人再生」が選ばれますが、債権者の反対が予想される場合は「給与所得者等再生」を検討します。
借金の減額幅はどれくらい?
個人再生での借金減額は、以下の基準で決まります:
- ・100万円未満:減額なし(全額返済)
- ・100万円以上500万円未満:100万円に減額
- ・500万円以上1500万円未満:5分の1に減額
- ・1500万円以上3000万円未満:300万円に減額
- ・3000万円以上5000万円以下:10分の1に減額
ただし、清算価値保障原則があり、「持っている財産の合計額」よりも少ない金額には減額できません。たとえば借金500万円でも、財産が200万円あれば、最低でも200万円は返済する必要があります。
この仕組み、少し複雑ですよね。簡単に言えば「財産を処分した場合の価値」と「法律上の減額基準」を比べて、高い方を返済するルールです。
個人再生の主なデメリット一覧
個人再生には確かに魅力的なメリットがありますが、同時に無視できないデメリットも存在します。
全体像
経済的・信用面のデメリット
- ・信用情報機関に事故情報が登録される(5~10年間)
- ・クレジットカードが使えなくなる
- ・新規借入やローンが組めなくなる
- ・保証人・連帯保証人に請求が行く
- ・手続き費用が高額(50~80万円程度)
手続き面のデメリット
- ・手続きが非常に複雑で時間がかかる(1年~1年半)
- ・膨大な書類準備が必要
- ・裁判所への出頭が必要
- ・官報に氏名・住所が掲載される
- ・厳格な収入要件があり、利用できない人も多い
返済面のデメリット
- ・3~5年間の長期返済が続く
- ・返済が滞ると計画取消になり、元の借金額に戻る
- ・途中で収入が減った場合の対応が難しい
生活面のデメリット
- ・家計管理を厳しくチェックされる
- ・弁護士との定期的な面談や報告が必要
- ・精神的なストレスが長期間続く
これらのデメリットについて、次の章から一つずつ詳しく見ていきます。
信用情報(ブラックリスト)への影響
5~10年間は新規借入が困難
個人再生を申し立てると、信用情報機関に「事故情報」として登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」状態です。
登録期間は信用情報機関によって異なります:
- ・CIC(クレジットカード会社系):完済から5年
- ・JICC(消費者金融系):完済から5年
- ・KSC(銀行系):手続開始決定から10年
つまり、個人再生で3年かけて返済した場合、返済完了からさらに5年(銀行系は手続開始から10年)は、クレジットカードの新規作成や住宅ローンなどの借入が難しくなります。
日常生活での具体的な影響
信用情報に事故情報が載ると、以下のようなことができなくなります:
できなくなること:
- ・クレジットカードの新規発行(既存カードも更新時に使えなくなる)
- ・住宅ローン、自動車ローン、教育ローン
- ・携帯電話の分割払い(端末代)
- ・賃貸契約(信販系保証会社を使う物件)
- ・奨学金の保証人(ただし機関保証なら可能)
できること:
- ・デビットカード、プリペイドカードの利用
- ・携帯電話の契約(端末一括購入または古い端末を使う)
- ・銀行口座の開設
- ・給与振込、公共料金の口座引落し
- ・現金での買い物
福岡市在住のDさん(38歳男性)は、個人再生後にクレジットカードが使えず不便を感じましたが、楽天デビットカードとPayPayを組み合わせることで「むしろ使いすぎを防げて良かった」と話しています。
家族への影響は?
よく心配されるのが「家族の信用情報への影響」ですが、家族の信用情報には一切影響しません。
配偶者や子供が別途クレジットカードを持っている場合、それらは引き続き使用できます。ただし、本人が主契約者の「家族カード」は使えなくなります。
子供の奨学金についても、本人が保証人にならず「機関保証」を利用すれば問題ありません。ただ、親が個人再生中に保証人を依頼されても、審査に通らない可能性が高いのは事実です。
手続きの複雑さと必要な準備
個人再生は債務整理で最も複雑
個人再生の最大のデメリットの一つが、手続きの複雑さです。自己破産や任意整理と比べても、圧倒的に複雑で時間がかかります。
なぜこれほど複雑なのか。それは裁判所を通じて法的に借金を減額するため、厳格な審査と手続きが必要だからです。裁判所は「本当にこの人は返済能力があるのか」「財産を隠していないか」「計画通り返済できるのか」を徹底的に調査します。
必要書類の膨大さ
個人再生の申立てには、想像以上に多くの書類が必要です:
収入関係:
- ・給与明細(直近2~3ヶ月分)
- ・源泉徴収票(過去2年分)
- ・課税証明書
- ・確定申告書(個人事業主の場合)
財産関係:
- ・預金通帳のコピー(全ページ、過去2年分)
- ・保険証券と解約返戻金証明書
- ・退職金見込額証明書
- ・不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書
- ・自動車の車検証、査定書
- ・有価証券の残高証明書
負債関係:
- ・借入先一覧
- ・契約書、明細書
- ・取引履歴
その他:
- ・住民票
- ・戸籍謄本
- ・家計簿(直近2~3ヶ月分、今後も継続)
これらを漏れなく集めるのは、かなり大変な作業です。特に預金通帳の全ページコピーは、長年使っている口座だと数百ページになることも。
家計簿の作成と継続
個人再生で特に負担になるのが家計簿の作成です。申立て前から作成を始め、手続き中、そして返済期間中も継続する必要があります。
「家計簿なんてつけたことない」という方も多いでしょう。でも個人再生では、収入と支出を1円単位で記録し、レシートも保管しなければなりません。裁判所は家計簿を通じて「計画的に生活し、返済できる人かどうか」を判断するからです。
名古屋市在住のEさん(45歳女性)は、「家計簿をつけるのが最初は苦痛だったが、お金の流れが見えるようになって、無駄遣いが減った」と振り返ります。デメリットと感じていたことが、結果的に家計改善につながったケースです。
弁護士との定期的な面談
個人再生は弁護士なしでは事実上不可能です。そして弁護士に依頼すると、定期的な面談や報告が必要になります。
- ・月1回程度の面談(事務所によって異なる)
- ・家計簿の提出と確認
- ・返済状況の報告
- ・生活状況の変化の報告
仕事が忙しい方にとって、これらの時間を作るのは負担かもしれません。ただ、この過程があるからこそ、計画的な返済ができるとも言えます。
高額な費用と期間の長さ
個人再生にかかる費用の内訳
個人再生は、債務整理の中で最も費用が高額です。総額で50~80万円程度が相場となります。
費用の内訳:
弁護士費用:
- ・着手金:30~50万円
- ・報酬金:0~20万円
- ・実費:数万円
裁判所費用:
- ・申立手数料:1万円程度
- ・予納郵券(切手代):数千円
- ・個人再生委員への報酬:15~25万円(裁判所による)
特に東京地裁では、ほぼすべてのケースで「個人再生委員」が選任されるため、その分の費用(15~25万円)が追加でかかります。一方、地方の裁判所では個人再生委員が選任されないこともあり、費用を抑えられる場合があります。
分割払いは可能だが…
「50万円以上も用意できない」と思われるかもしれません。多くの法律事務所では、弁護士費用の分割払いに対応しています。
ただし注意点があります。弁護士費用の分割払いを完済してから、裁判所への申立てを行う事務所も多いのです。つまり、弁護士に依頼してから実際に申立てまで数ヶ月~半年以上かかる場合があります。
その間、借金の利息は止まりますが(受任通知の効果)、早く借金を減額したい方にとっては、この期間が長く感じられるかもしれません。
手続きにかかる期間
個人再生の手続きは、準備期間を含めると1年~1年半程度かかるのが一般的です。
大まかなスケジュール:
- 1. 弁護士への相談・依頼
- 2. 書類収集・家計簿作成(2~6ヶ月)
- 3. 裁判所への申立て
- 4. 個人再生委員との面談(選任される場合)
- 5. 再生手続開始決定(申立てから1~2ヶ月)
- 6. 債権額の確定(2~3ヶ月)
- 7. 再生計画案の提出
- 8. 書面決議・意見聴取(1~2ヶ月)
- 9. 再生計画認可決定
- 10. 認可確定(約1ヶ月)
- 11. 返済開始
申立てから認可確定まででも約6ヶ月~1年。準備期間を含めれば1年以上かかります。自己破産(3~6ヶ月)や任意整理(2~3ヶ月)と比べて、圧倒的に長いのです。
この長期間、精神的なプレッシャーを感じ続けることになります。「早く楽になりたい」という方にとって、この期間の長さは大きなデメリットでしょう。
収入要件と利用できない人
安定収入がないと利用できない
個人再生の最も重要な要件が「継続的または反復した収入の見込み」です。簡単に言えば、安定した収入がないと利用できません。
なぜなら、個人再生は「減額した借金を3~5年かけて返済する」手続きだからです。返済できる見込みがない人は、最初から申立てが認められません。
利用できる人:
- ・サラリーマン、公務員
- ・パート・アルバイト(安定していれば)
- ・年金受給者
- ・個人事業主(継続的な収入があれば)
利用できない人:
- ・無職、無収入
- ・専業主婦・主夫(配偶者の収入は認められない)
- ・日雇い労働など収入が不安定な人
- ・生活保護受給者
返済可能額の具体的な基準
「安定収入」と言っても、具体的にどれくらい必要なのでしょうか。目安としては、生活費を差し引いた後、毎月の返済額を支払える余裕があることです。
たとえば借金500万円が100万円に減額された場合、36回払いで月々約2.8万円の返済が必要です。手取り収入から家賃、食費、光熱費などを引いて、毎月2.8万円以上残る必要があります。
裁判所は家計簿を見て「この人は本当に返済できるのか」を厳しくチェックします。ギリギリの生活費で計算していると「返済不可能」と判断され、申立てが棄却されることもあります。
借金額の上限と下限
個人再生には借金額の制限もあります:
- ・上限:5000万円以下(住宅ローンを除く)
- ・下限:実質100万円以上
5000万円を超える借金がある場合は、個人再生ではなく通常の民事再生を検討する必要があります。
また、借金が100万円未満の場合、減額されない(全額返済)ため、個人再生を利用するメリットがほとんどありません。この場合は任意整理の方が適しています。
大阪市在住のFさん(52歳男性)は、借金80万円で個人再生を検討しましたが、弁護士から「減額されないため、任意整理の方が良い」とアドバイスされ、方針を変更しました。結果的に費用も期間も抑えられ、「専門家に相談して良かった」と話しています。
保証人・連帯保証人への影響
保証人に一括請求が行く
個人再生の大きなデメリットの一つが、保証人・連帯保証人への影響です。
本人が個人再生で借金を減額すると、債権者は保証人に対して減額前の金額を一括請求します。これは法律上避けられません。
たとえば500万円の借金が100万円に減額されても、保証人には500万円全額が請求されます。本人の減額は保証人には一切関係ないのです。
保証人がいる場合の対処法
保証人に迷惑をかけたくない場合、以下のような選択肢があります:
選択肢1:
保証人も債務整理する 保証人も一緒に任意整理や個人再生、自己破産を検討します。親子で同時に債務整理するケースもあります。
選択肢2:
保証人がいる借金だけ除外して任意整理 個人再生ではなく、保証人がいる借金は通常通り返済し、それ以外を任意整理する方法です。ただし借金額によっては現実的でない場合も。
選択肢3:
保証人が一括返済できる場合は個人再生を進める 保証人に資力があり、請求されても支払える場合は、事前に了承を得た上で手続きを進めます。
選択肢4:
保証人と分割払いの交渉をしてもらう 債権者が同意すれば、保証人も分割払いにできる可能性があります(必ず認められるわけではない)。
いずれにしても、保証人には必ず事前に相談することが重要です。突然一括請求が来て、人間関係が壊れるケースも少なくありません。
奨学金の保証人問題
特に注意が必要なのが奨学金です。多くの奨学金には親が連帯保証人、親戚が保証人になっています。
本人が個人再生すると、親や親戚に奨学金の残額が一括請求されます。数百万円の請求が突然来れば、家族関係に深刻な影響を及ぼします。
対策としては:
- ・日本学生支援機構に相談して分割払いを認めてもらう
- ・保証人も一緒に債務整理を検討する
- ・奨学金だけは個人再生から除外する(全体の債務整理方針の見直し)
官報掲載によるプライバシーの問題
官報とは何か
個人再生を申し立てると、官報に氏名と住所が掲載されます。これはプライバシーの観点からデメリットと言えます。
官報とは、国が発行する機関紙で、法律や政令の公布、裁判所の公告などが掲載されます。
個人再生の場合、以下のタイミングで3回掲載されます:
- 1. 再生手続開始決定時
- 2. 書面決議または意見聴取の公告時
- 3. 再生計画認可決定時
掲載内容は「氏名」「住所」「事件番号」「手続の内容」などです。
実際に周囲に知られる可能性は低い
「官報に載ったら周りに知られるのでは?」と心配されますが、実際に一般の人が官報を見る機会はほとんどありません。
官報は図書館や官報販売所、インターネット版(直近30日分は無料)で閲覧できますが、日常的にチェックしている人はまずいません。
ただし、以下の人たちは官報をチェックしています:
- ・闇金業者(勧誘目的)
- ・信用情報機関
- ・金融機関(一部)
特に注意すべきは闇金業者からのダイレクトメールです。「審査なしで融資します」といった勧誘が来ることがあります。絶対に応じてはいけません。
職場に知られる可能性
「会社に官報を見られて解雇されるのでは?」という心配もありますが、一般企業が官報を日常的にチェックすることはまずありません。
会社に知られる可能性があるのは:
- ・会社から借入がある場合(債権者として通知される)
- ・退職金見込額証明書を会社に請求する場合
- ・給与差押えを受けている場合
これらに該当しなければ、会社に知られることはほとんどありません。
個人再生後の生活制約
返済期間中の家計管理
個人再生の認可が下りて返済が始まっても、すぐに自由になるわけではありません。3~5年間の返済期間中は、厳格な家計管理が続きます。
弁護士によっては、返済期間中も定期的に家計簿の提出を求めることがあります。また、大きな支出(車の購入、引越しなど)をする場合は、事前に弁護士に相談が必要です。
返済が1回でも滞ると、再生計画が取り消される可能性があります。取り消されると、減額前の借金額に戻り、すべてが水の泡になってしまいます。
収入減少時のリスク
個人再生の大きなリスクが、返済期間中に収入が減った場合の対応の難しさです。
たとえば:
- ・リストラや倒産で失業した
- ・病気で働けなくなった
- ・給料が大幅に減った
こうした事情で返済が困難になった場合、以下の対処法があります:
ハードシップ免責:
やむを得ない事情で返済が困難になり、すでに4分の3以上を返済している場合、残りの返済を免除してもらえる制度。ただし条件が厳しく、利用できるケースは限定的。
再生計画の変更:
一部の裁判所では、返済期間の延長(最長2年)を認めてくれる場合があります。ただしすべての裁判所で認められるわけではありません。
自己破産への切替え:
どうしても返済できない場合、自己破産に切り替える選択肢もあります。ただし、それまでに支払った金額は戻ってきません。
札幌市在住のGさん(42歳男性)は、個人再生で返済中にコロナ禍で収入が半減。弁護士に相談し、債権者と交渉して返済期間を2年延長してもらうことができました。「諦めずに相談して良かった」とGさんは話します。
クレジットカードなしの生活
個人再生後は、5~10年間クレジットカードが作れません。これは日常生活で不便を感じる場面が多いです。
不便を感じる場面:
- ・ネットショッピングの決済
- ・サブスクリプションサービスの支払い
- ・海外旅行でのカード決済
- ・ホテル予約時のデポジット
- ・ETCカード(クレジット機能付き)
代替手段:
- ・デビットカード(楽天デビット、三菱UFJデビットなど)
- ・プリペイドカード(Kyash、バンドルカードなど)
- ・QR決済(PayPay、楽天ペイなど)
- ・ETCパーソナルカード(保証金必要だがクレジット機能不要)
最近はキャッシュレス決済の選択肢が増えており、クレジットカードなしでも大きな不便は感じないという声も多く聞かれます。
住宅ローン特則の落とし穴
住宅を残せる「住宅ローン特則」とは
個人再生の最大のメリットとされるのが「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」です。これを利用すれば、住宅ローンは通常通り返済を続けながら、他の借金を減額できます。
マイホームを手放さずに借金を整理できるため、家族がいる方には非常に魅力的な制度です。
ただし、住宅ローン特則には様々な制約があり、すべての人が利用できるわけではありません。
住宅ローン特則が使えないケース
以下のような場合、住宅ローン特則は使えません:
1. 住宅ローン以外の抵当権が設定されている
消費者金融などが後から抵当権を設定している場合、住宅ローン特則は使えません。
2. 住宅ローンを滞納して保証会社が代位弁済してから6ヶ月経過している
保証会社による代位弁済から6ヶ月以内なら特則が使えますが、それを過ぎると利用できません。早めの相談が重要です。
3. 本人以外が所有者になっている
親名義の家、共有名義で親が含まれる場合などは利用できないことがあります。
4. 事業用や投資用の不動産
あくまで「居住用」の住宅でなければなりません。
5. ペアローンや連帯債務の場合
配偶者とペアローンを組んでいる場合、両方が個人再生しないと特則が使えないケースがあります。
住宅ローンは減額されない
重要な点として、住宅ローン特則を使っても、住宅ローン自体は1円も減額されません。通常通り返済を続ける必要があります。
つまり、「住宅ローン月10万円+他の借金の返済月5万円=合計15万円」を支払い続けることになります。収入が少ない場合、この二重の支払いが負担になります。
横浜市在住のHさん(48歳男性)は、住宅ローン月8万円に加えて、個人再生での返済月4万円の合計12万円を支払っています。「正直きついけど、家を守るためと思えば頑張れる」と話していますが、貯金はほとんどできない状況です。
巻き戻し条項のリスク
住宅ローン特則には「巻き戻し条項」と呼ばれるものがあります。これは、個人再生の返済を怠ると、住宅ローンも期限の利益を失う(一括返済を求められる)というものです。
つまり、個人再生での返済が滞ると、住宅ローンまで一括請求され、結局マイホームを失うリスクがあるのです。
住宅ローン特則は魅力的ですが、「確実に返済を続けられる」という自信がない場合、むしろリスクになりかねません。
他の債務整理との比較
個人再生が本当に最適な選択なのか、他の債務整理方法と比較してみましょう。
任意整理との比較
| 項目 | 個人再生 | 任意整理 |
|---|---|---|
| 減額幅 | 大幅(5分の1など) | 利息カットのみ |
| 手続き | 裁判所を通す | 弁護士が直接交渉 |
| 期間 | 1年〜1年半 | 2〜3ヶ月 |
| 費用 | 50〜80万円 | 1社3〜5万円 |
| 住宅 | 残せる(特則利用) | 残せる |
| 保証人への影響 | あり | 対象外にすれば影響なし |
| 官報掲載 | あり | なし |
任意整理が向いている人:
- ・借金総額が比較的少ない(年収の1~1.5倍程度)
- ・安定収入があり、3~5年で元本を返済できる
- ・手続きを簡単に済ませたい
- ・保証人に迷惑をかけたくない
自己破産との比較
| 項目 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|
| 借金 | 大幅減額(返済必要) | ゼロになる |
| 住宅 | 残せる(特則利用) | 手放す |
| 財産処分 | 基本的に不要 | 一定額以上は処分 |
| 職業制限 | なし | あり(期間限定) |
| 費用 | 50〜80万円 | 20〜80万円 |
| 期間 | 1年〜1年半 | 3〜6ヶ月 |
| 収入要件 | 必要 | 不要 |
自己破産が向いている人::
- ・収入がない、または極めて少ない
- ・借金額が大きく返済不可能
- ・守るべき財産がない
- ・早く手続きを終わらせたい
選択のポイント
どの方法を選ぶべきかは、以下の基準で判断します:
1. 返済能力:
- ・3~5年で利息カット後の元本を返済できる → 任意整理
- ・減額すれば返済できる+安定収入あり → 個人再生
- ・返済不可能 → 自己破産
2. 守りたい財産:
- ・住宅を絶対残したい+返済能力あり → 個人再生
- ・住宅なし、財産少ない → 自己破産も選択肢
3. 職業:
- ・制限対象職業+返済能力あり → 個人再生
- ・制限対象職業でない → 自己破産も選択肢
4. 保証人への配慮:
- ・保証人に迷惑かけたくない → 任意整理で対象外にする
- ・保証人も一緒に整理できる → 個人再生・自己破産も選択肢
迷ったら、必ず弁護士に相談して客観的な意見を聞きましょう。無料相談を複数の事務所で受けて比較するのもおすすめです。
デメリットを最小限に抑える方法
早めの相談が最重要
個人再生のデメリットを最小限に抑える最大のポイントは、できるだけ早く専門家に相談することです。
状況が悪化してからでは、選択肢が限られます。たとえば:
- ・住宅ローンの滞納が6ヶ月以上経過 → 住宅ローン特則が使えない
- ・借金が5000万円超 → 個人再生が使えない
- ・収入がゼロになった → 個人再生が使えない
早めに相談すれば、より有利な条件で手続きできる可能性が高まります。
弁護士選びのチェックポイント
個人再生を成功させるには、経験豊富な弁護士に依頼することが不可欠です。
良い弁護士の見分け方:
- ・個人再生の実績が豊富(ホームページで確認)
- ・初回相談無料
- ・説明が丁寧でわかりやすい
- ・デメリットもしっかり説明する
- ・費用の内訳が明確
- ・分割払いに対応している
- ・地元の裁判所の運用に詳しい
避けるべき弁護士:
- ・「絶対認可される」など根拠のない保証をする
- ・個人再生しか勧めない(他の選択肢を検討しない)
- ・費用が異常に高い、または異常に安い
- ・連絡が取りにくい
複数の事務所で無料相談を受けて、比較検討することをおすすめします。
家計改善で返済能力を高める
個人再生を確実に成功させるには、家計改善が重要です。
やるべきこと:
- ・固定費の見直し(通信費、保険料、サブスクなど)
- ・無駄な支出のカット
- ・副業やアルバイトで収入増
- ・家計簿を習慣化
裁判所は「この人は計画的に生活できるか」を厳しく見ます。家計改善の努力が認められれば、認可の可能性が高まります。
保証人との誠実なコミュニケーション
保証人がいる場合、事前に誠実に説明し、理解を得ることが重要です。 突然一括請求が来て初めて知ったとなれば、人間関係は確実に壊れます。事前に説明し、一緒に対策を考えることで、関係を維持できる可能性が高まります。
よくある質問と回答
Q1. 個人再生すると家族に知られる?
A. 同居家族には知られる可能性が高いです。
家計全体の資料提出が必要なため、配偶者の収入証明や通帳コピーが 求められる場合があります。 一人暮らしであれば家族に知られずに手続きできる可能性もありますが、 同居の場合は正直に話した方がスムーズです。
Q2. 個人再生中に転職できる?
A. できますが、弁護士への報告が必要です。
転職自体は禁止されていませんが、収入の変動が生じるため、 必ず弁護士に報告してください。 大幅な収入減となる場合は、返済計画の見直しが必要になることもあります。
Q3. 車のローンがある場合はどうなる?
A. 車は引き上げられる可能性が高いです。
個人再生では、住宅ローン以外のローンも整理対象となります。 車のローンが残っている場合、所有権がローン会社にあるため、 原則として車は引き上げられます。
ただし、ローンを完済している車や、所有権が本人にあり、 かつ価値が低い場合には、財産として残せることもあります。
Q4. 個人再生は何回でもできる?
A. 法律上の回数制限はありませんが、2回目は難しいです。
1回目の個人再生から一定期間(通常7年程度)が経過していない場合、 2回目の認可は難しくなります。 また、過去に個人再生をした事実は、裁判所で厳しく審査されます。
Q5. 税金や年金も減額される?
A. いいえ、減額されません。
以下のものは個人再生でも減額されず、全額支払い義務が残ります:
- 税金(所得税、住民税、固定資産税など)
- 社会保険料(年金、健康保険)
- 罰金
- 養育費
Q6. 賃貸住宅に住んでいても個人再生できる?
A. できます。
個人再生は持ち家がなくても利用できます。 ただし、家賃を滞納している場合は、その分を優先的に支払う必要があります。
また、信販系保証会社を利用している場合、 更新時に審査が通らない可能性があるため、 引越しを検討する必要が出てくることもあります。
Q7. 小規模個人再生で債権者に反対されたら?
A. 給与所得者等再生に切り替えるか、自己破産を検討します。
小規模個人再生は、債権者の過半数の同意が必要です。 反対が多い場合は不認可となります。
その場合、債権者の同意が不要な 「給与所得者等再生」に切り替えるか、 自己破産を検討することになります。
Q8. 個人再生後、何年でクレジットカードが作れる?
A. 最短5年、最長10年です。
信用情報機関から情報が削除されるまで、 最短5年(CIC・JICC)、最長10年(KSC)かかります。
返済完了から5年ではなく、手続開始や完済時期によって異なるため、 個別の確認が必要です。
まとめ:デメリットを理解した上での賢い選択を
個人再生のデメリットは「投資」と考える
ここまで個人再生の様々なデメリットを見てきました。確かに、手続きの複雑さ、費用の高さ、期間の長さ、信用情報への影響など、デメリットは少なくありません。
しかし、これらのデメリットは**人生を再建するための「投資」**と考えることもできます。
- ・高額な費用 → 借金を大幅に減額するための必要経費
- ・長い期間 → 確実に返済するための準備期間
- ・信用情報への影響 → お金との付き合い方を見直す機会
- ・家計管理の厳格化 → 健全な金銭感覚を身につけるチャンス
実際、個人再生を経験した多くの人が「大変だったが、やって良かった」「生活が健全になった」と話しています。
メリットとデメリットを天秤にかける
個人再生を選ぶべきかどうかは、メリットとデメリットを冷静に比較することが重要です。
個人再生のメリット:
- ・借金を5分の1程度に大幅減額
- ・住宅を残せる(住宅ローン特則)
- ・財産を基本的に処分しなくて良い
- ・職業制限がない
- ・給料差押えを止められる
個人再生のデメリット:
- ・手続きが複雑で期間が長い
- ・費用が高額
- ・安定収入が必要
- ・保証人に影響がある
- ・信用情報に5~10年記録される
あなたの状況で、メリットがデメリットを上回るなら、個人再生は有力な選択肢です。逆にデメリットが大きいなら、他の方法を検討すべきでしょう。
専門家への相談が成功の鍵
個人再生は非常に専門的な手続きです。インターネットの情報だけで判断せず、必ず弁護士に相談してください。
無料相談を利用すれば、費用をかけずに:
- ・あなたの状況で個人再生が最適か
- ・他の選択肢との比較
- ・具体的な費用と期間
- ・デメリットへの対処法
これらを専門家の視点から教えてもらえます。
一歩踏み出す勇気を
借金問題は、放置すればするほど悪化します。「どうせ返せない」と諦めて何もしないのは、最悪の選択です。
個人再生は確かに簡単な道ではありません。デメリットもあります。でも、法律で認められた正当な権利であり、人生をやり直すための強力な手段です。
「家族を守りたい」「マイホームを手放したくない」「人生をやり直したい」――そんな思いがあるなら、まずは一歩踏み出してみてください。
次のアクション:
- 1. 無料相談を予約する:地域の弁護士会、法テラスに連絡
- 2. 借金と収入を整理する:現状を正確に把握
- 3. 家族と話し合う:隠さず誠実に状況を共有
- 4. 複数の専門家の意見を聞く:比較検討して最適な方法を選ぶ
あなたの新しい人生は、今日の決断から始まります。勇気を持って、一歩を踏み出しましょう。