遺産分割協議の進め方|
弁護士が手順と注意点を分かりやすく解説

相続が発生すると、相続人全員で「遺産をどのように分けるか」を話し合う必要があります。この話し合いを遺産分割協議といいます。預貯金の解約、不動産の名義変更、株式の名義変更などは、相続人全員の合意内容を明確にしたうえで進める必要があります。

一方で、「何から始めればよいか分からない」「相続人の一人が話し合いに応じない」「不動産を誰が取得するかで揉めている」など、協議が進まないケースも少なくありません。このページでは、遺産分割協議の進め方を4つのステップで解説し、協議がまとまらない場合の調停・審判への移行方法、弁護士に依頼するメリットを分かりやすく説明します。

※遺産分割協議そのものに法定期限はありません。ただし、相続税の申告期限、相続放棄の期限、相続登記の申請義務など、関連手続きには期限があります。早めに進めることが重要です。

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遺産分割協議を始める前に確認すること

確認1|遺言書の有無

遺産分割協議を始める前に、まず被相続人が遺言書を残していないか確認します。有効な遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従って遺産を分けます。そのため、遺産分割協議が不要になることもあります。

  • 自宅、金庫、貸金庫、重要書類の保管場所を確認する
  • 法務局の自筆証書遺言書保管制度に保管されていないか確認する
  • 公正証書遺言がある可能性がある場合は、公証役場で検索する
  • 自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認が必要になることがある
  • 封印のある遺言書は、家庭裁判所での手続き前に勝手に開封しない

確認2|相続放棄を検討すべきか

被相続人に借金、保証債務、税金の滞納などがある場合は、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄の期限は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です。

遺産分割協議に参加したり、相続財産を処分したりすると、単純承認と評価される可能性があります。借金や保証債務がある場合は、協議を進める前に弁護士へご相談ください。

遺産分割協議の進め方【4ステップ】

STEP1|相続人を確定する

遺産分割協議は、法定相続人全員が参加しなければ成立しません。まず、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を収集し、相続人を確定します。相続人の一人でも漏れていると、遺産分割協議は無効となるおそれがあります。前婚の子、認知した子、養子、疎遠な親族がいる場合は特に注意が必要です。

必要書類内容
被相続人の戸籍謄本出生から死亡までの連続した戸籍を確認します。
除籍謄本・改製原戸籍古い戸籍や改製前の記録も確認します。
相続人全員の戸籍謄本現在の戸籍を確認し、相続人であることを確認します。
相続関係説明図相続関係を一覧化する資料です。登記手続きでも利用されます。

STEP2|相続財産を調査する

相続人が確定したら、次に相続財産を調査します。預貯金、不動産、有価証券、自動車、貴金属などのプラスの財産だけでなく、借入金、保証債務、未払い税金などのマイナスの財産も確認します。

財産の種類確認方法・注意点
不動産固定資産税納税通知書、名寄帳、登記事項証明書で確認。評価方法は固定資産税評価額、路線価、実勢価格など、目的に応じて検討します。
預貯金金融機関に残高証明書や取引履歴を請求します。通帳が見当たらない場合でも、金融機関を調査できることがあります。
株式・投資信託証券会社や信託銀行に照会し、死亡日時点の残高を確認します。
生命保険金受取人が指定されている死亡保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象外です。ただし、相続人間の公平を著しく害するような特段の事情がある場合は、特別受益に準じて問題となることがあります。
借入金・保証債務金融機関、信用情報機関、契約書類などから確認します。保証債務がある場合は特に注意が必要です。
葬儀費用・未払い費用葬儀費用は当然に相続債務となるわけではありませんが、誰が負担するかについて協議の対象になることがあります。

STEP3|遺産の分け方を協議する

相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で「誰が、どの財産を、どのように取得するか」を話し合います。協議の方法は、対面、電話、書面、メール、オンラインなど自由ですが、最終的には相続人全員の合意が必要です。相続人の一人でも反対している場合や、連絡を無視している場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。

分割方法概要向いているケース
現物分割不動産や預貯金などの財産を、そのままの形で各相続人に分ける方法財産の種類が多く、相続人ごとに分けやすい場合
代償分割一人の相続人が不動産などを取得し、他の相続人に代償金を支払う方法自宅や事業用不動産を売却せずに残したい場合
換価分割不動産などを売却し、売却代金を相続人で分ける方法公平に現金で分けたい場合、不動産を誰も取得しない場合
共有分割複数の相続人が共有名義で取得する方法暫定的な対応として使われることがありますが、将来の管理・売却で揉めやすいため慎重に判断すべきです
特別受益・寄与分が争点になる場合:特定の相続人が生前贈与や住宅取得資金の援助を受けていた場合、また、被相続人の事業や介護に特別な貢献をした相続人がいる場合は、相続分の調整を主張できることがあります。証拠の有無や評価額の算定が争点になりやすい分野です。早めに弁護士へご相談ください。

STEP4|遺産分割協議書を作成する

相続人全員の合意が得られたら、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書は、不動産登記、預貯金解約、株式名義変更などで必要になる重要な書類です。

項目内容
記載事項被相続人の氏名・死亡日・本籍、相続人全員の氏名・住所、各財産の取得者、作成日などを記載します。
不動産の記載登記事項証明書のとおり、所在・地番・地目・地積、家屋番号などを正確に記載します。
預貯金の記載金融機関名、支店名、口座種別、口座番号などをできるだけ具体的に記載します。
署名・押印相続人全員が署名し、実印で押印します。
添付書類相続人全員の印鑑証明書を添付します。印鑑証明書の発行時期は、提出先の指定に従って確認してください。
作成部数手続きに必要な部数を作成します。相続人全員が原本を保管する運用もありますが、提出先や手続き内容に応じて調整します。

協議がまとまらない場合|
調停・審判への移行

相続人全員の合意が得られない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。一人でも反対している場合、連絡を無視している相続人がいる場合、特別受益・寄与分・財産評価で対立している場合は、調停を検討すべきです。

遺産分割調停の概要

  • 申立先:相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
  • 申立費用:被相続人1人につき収入印紙1,200円分、連絡用郵便切手など
  • 郵便切手額:裁判所や当事者数により異なるため、申立先の家庭裁判所で確認が必要
  • 申立人:相続人の一人から申立て可能
  • 進行:調停委員を介して話し合い、合意できれば調停調書が作成される
  • 期間:事案の内容や対立状況によって異なり、半年から1年以上かかることもある

遺産分割審判

調停で合意できない場合は、審判に移行します。審判では、家庭裁判所が資料や当事者の主張を踏まえて遺産分割の方法を判断します。審判が確定すると、その内容に従って手続きを進めることになります。不服がある場合は、一定期間内に即時抗告を検討します。

特殊な相続人がいる場合の注意点

連絡が取れない相続人がいる場合

相続人の一人と連絡が取れない場合でも、その人を除いて遺産分割協議を進めることはできません。弁護士が住民票等の調査や弁護士会照会により住所を確認し、連絡を試みます。それでも所在が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには、通常、家庭裁判所の権限外行為許可が必要になります。

認知症などで判断能力が不十分な相続人がいる場合

判断能力が不十分な相続人は、自分だけで有効に遺産分割協議に参加できない場合があります。この場合、成年後見人の選任申立てが必要になることがあります。成年後見人が相続人でもある場合など、利益相反が生じる場面では、特別代理人の選任など別の手続きが必要になることがあります。手続きに時間がかかるため、早めに対応しましょう。

海外在住の相続人がいる場合

海外在住の相続人がいる場合、印鑑証明書の代わりに在外公館で発行される署名証明(サイン証明)などが必要になることがあります。郵送や現地手続きに時間がかかるため、通常より余裕を持って進める必要があります。

遺産分割協議を弁護士に依頼するメリット

メリット内容
精神的負担を軽減できる弁護士が代理人として交渉することで、他の相続人と直接やり取りする負担を減らせます。
法的に適切な主張ができる特別受益、寄与分、使い込み、財産評価など、専門的な争点を整理して主張できます。
戸籍収集・財産調査を任せられる相続人調査、金融機関への照会、不動産調査などを進めやすくなります。
協議書を正確に作成できる登記や金融機関で使える形の遺産分割協議書を作成できます。
調停・審判まで一貫対応できる協議で解決しない場合も、同じ弁護士が方針を引き継いで対応できます。
期限管理ができる相続放棄、相続税申告、相続登記、遺留分などの期限を踏まえて手続きを進められます。

遺産分割協議 進行チェックリスト

確認事項詳細
☐ 遺言書の有無を確認した自宅、貸金庫、法務局、公証役場などを確認します。
☐ 相続放棄を検討した借金や保証債務がある場合は、3か月の期限に注意します。
☐ 相続人全員を確定した被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集します。
☐ 相続財産を調査した不動産、預貯金、有価証券、動産などを確認します。
☐ 借金・保証債務を調査した金融機関、信用情報機関、契約書類などを確認します。
☐ 特別受益・寄与分を確認した争点になる場合は証拠を整理します。
☐ 分割方法を検討した現物分割、代償分割、換価分割、共有分割を比較します。
☐ 相続人全員の合意を得た一人でも未合意の場合は調停を検討します。
☐ 遺産分割協議書を作成した全員の署名・実印押印・印鑑証明書を確認します。
☐ 不動産登記に着手した相続登記の申請義務に注意します。
☐ 預貯金解約・名義変更を進めた金融機関ごとに必要書類を確認します。
☐ 相続税申告の要否を確認した必要な場合は相続開始を知った日の翌日から10か月以内が申告期限です。

よくある質問

遺産分割協議に期限はありますか?

遺産分割協議そのものに法定期限はありません。ただし、相続放棄は原則3か月以内、相続税申告は原則10か月以内、不動産の相続登記は一定の期限内に申請する義務があります。期限が関係する手続きが多いため、早めに進めることをおすすめします。

遺産分割協議書は自分で作れますか?

相続人全員が合意しており、財産の種類が少ない場合は自分で作成できることもあります。ただし、不動産の記載ミスや曖昧な表現があると、登記や金融機関の手続きで使えないことがあります。財産が複雑な場合や少しでも不安がある場合は、専門家に確認することをおすすめします。

相続人の一人と連絡が取れません。どうすればよいですか?

連絡が取れない相続人を除いて協議を進めることはできません。住所調査や内容証明郵便による通知を行い、それでも所在が分からない場合は、不在者財産管理人の選任申立てなどを検討します。不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには、通常、家庭裁判所の権限外行為許可が必要になります。

認知症の相続人がいる場合、協議できますか?

判断能力が不十分な方は、自分だけで有効に遺産分割協議へ参加できない場合があります。成年後見人の選任が必要になることがあり、利益相反がある場合は特別代理人が必要になることもあります。

海外在住の相続人がいる場合はどうなりますか?

印鑑証明書の代わりに、在外公館での署名証明などが必要になることがあります。郵送や現地手続きに時間がかかるため、早めに準備することが重要です。

協議がまとまらない場合、すぐ裁判になりますか?

まずは家庭裁判所の遺産分割調停を利用するのが一般的です。調停で合意できない場合に審判へ移行します。弁護士に依頼すれば、協議段階から調停・審判まで一貫して対応できます。

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