遺留分の計算方法と具体例|
割合・基礎財産・生前贈与を弁護士が解説

「自分の遺留分はいくらになるのか」「遺言書の内容が不公平だが、請求できる金額はどのくらいか」と悩んでいる方へ。

遺留分の計算は、一見すると「遺産額に一定割合を掛けるだけ」に見えます。しかし実際には、生前贈与の加算、不動産の評価、相続債務の控除、遺留分権利者自身が受けた特別受益、相続で取得した財産の有無など、複数の要素を確認する必要があります。

このページでは、遺留分侵害額の計算方法を4つのステップに分け、相続人の構成別の早見表と5つの具体例で解説します。ただし、掲載している計算例は一般的な考え方を示すものであり、実際の請求額は個別事情によって変わります。

⚠️ 注意:遺留分侵害額請求権は、「相続の開始」及び「遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったこと」を知った時から1年で時効により消滅します。また、相続開始から10年を経過した場合も行使できなくなります。

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遺留分侵害額の計算 - 基本公式と4ステップ

遺留分侵害額は、次の流れで計算します。

STEP内容・計算式
1 基礎財産を計算基礎財産 = 相続開始時の積極財産 + 一定の生前贈与 − 相続債務
2 自分の遺留分額を計算遺留分額 = 基礎財産 × 遺留分総割合(原則1/2、直系尊属のみの場合1/3)× 自分の法定相続分
3 自分が取得したもの等を確認自分が受けた遺贈・特別受益・相続で得た積極財産、自分が負担する相続債務を確認
4 遺留分侵害額を計算遺留分侵害額 = 遺留分額 − 自分の特別受益額 − 自分が相続で得た積極財産額 + 自分が相続で負担する債務額

遺留分割合の早見表

相続人の構成遺留分総割合各自の遺留分割合例:基礎財産6,000万円
配偶者のみ1/2配偶者:1/23,000万円
子のみ・1名1/2子:1/23,000万円
子のみ・2名1/2各子:1/4各1,500万円
子のみ・3名1/2各子:1/6各1,000万円
配偶者+子1名1/2配偶者:1/4 / 子:1/4各1,500万円
配偶者+子2名1/2配偶者:1/4 / 子:各1/8配偶者1,500万円・子各750万円
配偶者+子3名1/2配偶者:1/4 / 子:各1/12配偶者1,500万円・子各500万円
配偶者+直系尊属1/2配偶者:1/3 / 直系尊属:1/6配偶者2,000万円・直系尊属1,000万円
配偶者+兄弟姉妹1/2配偶者:1/2 / 兄弟姉妹:なし配偶者3,000万円・兄弟姉妹0円
直系尊属のみ(父母のみ)1/3各直系尊属:1/6各1,000万円
兄弟姉妹のみなし遺留分の権利なし0円

兄弟姉妹・甥・姪には遺留分がありません。したがって、兄弟姉妹のみが相続人となるケースでは、遺留分侵害額請求はできません。

遺留分算定の基礎財産 - 何を加算・減算するか

項目内容・注意点
+相続開始時の積極財産不動産、預貯金、株式、有価証券、借地権、ゴルフ会員権など。評価は原則として相続開始時点の価額を基準に検討します。
−相続債務借入金、住宅ローン、未払い税金、未払い医療費など。相続債務は基礎財産から控除します。
+相続人への生前贈与原則として、相続開始前10年以内にされた特別受益にあたる贈与を加算します。通常の扶養の範囲内の援助が常に対象になるわけではありません。
+相続人以外への贈与原則として相続開始前1年以内の贈与を加算します。ただし、贈与者・受贈者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合は、1年より前の贈与も問題となることがあります。
注意制度の適用時期は相続開始日によって変わります。令和元年7月1日より前に開始した相続では、改正前の遺留分減殺請求が問題となるため、個別確認が必要です。

不動産がある場合の評価方法

相続財産に不動産が含まれる場合、その評価額によって遺留分額が大きく変わります。評価方法には、時価、不動産鑑定評価、路線価、固定資産税評価額などがあります。

評価方法特徴・注意点
時価・実勢価格市場で売却した場合の価格を意識した評価です。実際の争いでは不動産鑑定や査定資料が重要になることがあります。
不動産鑑定評価費用はかかりますが、調停・訴訟で評価が大きく争われる場合に有用です。
路線価相続税評価で使われることが多い指標です。交渉上の参考資料として使われることがあります。
固定資産税評価額市区町村の評価額です。参考資料にはなりますが、常に遺留分計算の評価額としてそのまま採用されるわけではありません。

具体的な計算例(5パターン)

計算例1:配偶者+子2名、遺言で全財産を長男に

相続財産6,000万円、相続人は配偶者・長男・次男、生前贈与なし。遺留分総額は6,000万円×1/2=3,000万円。配偶者の遺留分は3,000万円×1/2=1,500万円次男の遺留分は3,000万円×1/4=750万円。配偶者・次男が何も取得していない場合、それぞれ長男に請求できる可能性があります。

計算例2:生前贈与がある場合

相続財産4,000万円、相続人は長男・次男、遺言で全財産を長男へ、長男が5年前に住宅資金2,000万円の贈与を受けていた例。基礎財産は4,000万円+2,000万円=6,000万円。次男の遺留分は6,000万円×1/2×1/2=1,500万円です。生前贈与が特別受益として加算されるかが重要です。

計算例3:不動産評価で差が出る場合

不動産の評価額を4,000万円と見るか2,800万円と見るかで、基礎財産と遺留分額が変わります。相続人が長男・次男で、次男の遺留分割合が1/4の場合、不動産評価の差1,200万円は、次男の遺留分額に300万円の差を生じさせます。評価方法は個別事情に応じて検討が必要です。

計算例4:借金・相続債務がある場合

預金6,000万円、借入金2,000万円、相続人は長男・次男、遺言で全財産を長男へ。基礎財産は6,000万円−2,000万円=4,000万円。次男の遺留分は4,000万円×1/2×1/2=1,000万円です。相続債務を控除し忘れると過大な計算になります。

計算例5:直系尊属のみが相続人の場合

相続財産4,000万円、相続人は父母のみ、遺言で第三者Aに全財産を遺贈。直系尊属のみが相続人の場合、遺留分総割合は1/3です。父母それぞれの遺留分は4,000万円×1/3×1/2=約667万円です。

計算が特に複雑になるケース

ケース複雑になる理由
複数の不動産がある物件ごとに評価方法・評価額を検討する必要があります。
生前贈与が複数回ある贈与の日付、金額、受贈者、特別受益性、10年以内かどうかを整理する必要があります。
特別受益が絡む遺留分権利者自身が受けた特別受益は、遺留分侵害額から控除されるため確認が必要です。
寄与分の主張がある寄与分は主に遺産分割で問題となる制度であり、遺留分計算へ当然に反映されるわけではありません。個別に弁護士確認が必要です。
代襲相続がある代襲相続人の法定相続分・遺留分割合を確認する必要があります。
受遺者・受贈者が複数いる誰にどの順序・範囲で請求するかを整理する必要があります。
海外財産・外貨資産がある評価日・為替レート・準拠法などを確認する必要があります。

よくある質問

遺留分の計算は自分でできますか?

基本的な割合や概算はご自身でも試算できます。ただし、不動産評価、生前贈与の加算、遺留分権利者自身の特別受益、相続債務、受遺者・受贈者が複数いる場合の計算など、専門判断が必要な部分があります。試算は参考にとどめ、正確な金額は弁護士に確認することをおすすめします。

遺産がほぼ不動産のみで現金がない場合でも計算できますか?

計算自体は可能です。不動産の評価額を基礎に遺留分を算定します。ただし、遺留分侵害額請求は原則として金銭請求であるため、支払う側に現金がない場合は、分割払い、期限猶予、当事者間合意による財産移転などを検討することになります。

「遺産がゼロ」と言われましたが、生前に多額の贈与があったようです。計算に加算できますか?

相続人への生前贈与のうち、相続開始前10年以内の特別受益にあたるものは、遺留分算定の基礎財産に加算される可能性があります。相続人以外への贈与は原則1年以内ですが、例外もあります。贈与の事実・金額・時期を確認する必要があります。

被相続人が亡くなる直前に大量の財産を贈与していました。計算に含まれますか?

相続人以外への贈与は、原則として相続開始前1年以内のものが対象です。ただし、贈与者と受贈者の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合は、1年より前の贈与も問題になる可能性があります。相続人への贈与は原則10年以内の特別受益が対象です。

計算してみたら遺留分侵害額がゼロになりました。何もできませんか?

計算結果がゼロ以下であれば、遺留分侵害額請求は難しい可能性があります。ただし、生前贈与の加算漏れ、不動産評価、相続債務、特別受益の扱いなどで結果が変わる場合があります。諦める前に、計算の前提を弁護士に確認することをおすすめします。

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