遺産分割調停・審判|
協議がまとまらない場合の解決手段を弁護士が解説

遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。「相手が話し合いに応じない」「感情的な対立で解決の糸口が見えない」「一部の相続人が連絡を無視している」という場合、当事者同士の話し合いだけで解決するのは難しくなります。

このような場合に利用できる法的手続きが「遺産分割調停」です。遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が中立的な立場で相続人双方の意見を聞き、合意形成をサポートします。調停でも合意に至らない場合は、審判手続きに移行し、裁判官が法律と証拠に基づいて遺産の分割方法を判断します。

まず協議の進め方を確認したい方は、関連ページ遺産分割協議の進め方もあわせてご覧ください。

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調停と審判 - 2つの手続きの違い

遺産分割の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の手続きとして「調停」と「審判」があります。調停は話し合いによる合意を目指す手続きで、審判は裁判官が分割方法を判断する手続きです。

比較項目遺産分割調停遺産分割審判
手続きの性質家庭裁判所での話し合い・合意形成裁判官が法律と証拠に基づいて判断
関与する人調停委員・裁判官裁判官
開始の場面協議がまとまらない場合に相続人が申立て調停不成立後に移行するのが一般的
結論の決まり方相続人全員の合意裁判所の判断。全員の合意は不要
効力調停成立後の調停調書には強制力がある審判が確定すれば強制力がある
不服申立て合意による成立のため、原則として不服申立ては想定されない審判書の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告が可能
期間数か月から1年以上。争点が多い場合はさらに長期化調停不成立後、さらに数か月から1年以上かかることがある

実務上は、まず調停で相続人間の合意形成を試み、合意できない場合に審判へ移行する流れが一般的です。

遺産分割調停の流れ【5ステップ】

STEP1 調停の申立て

遺産分割調停は、相続人の一人が申立人となり、他の相続人を相手方として家庭裁判所に申し立てます。申立先は、相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です。相手方が大分県内にいる場合は、大分家庭裁判所が申立先となることがあります。

必要書類・費用内容
遺産分割調停申立書申立人・相手方、申立ての趣旨、事情などを記載します。
被相続人の戸籍謄本等出生から死亡までの連続した戸籍を収集します。
相続人全員の戸籍謄本相続人を確定するために必要です。
遺産に関する資料不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金の残高証明書、有価証券資料など。
収入印紙被相続人1人につき1,200円分が必要です。
連絡用郵便切手・郵便料金額は裁判所ごとに異なります。申立先の家庭裁判所で確認します。

STEP2 第1回調停期日の通知・出席

申立て後、家庭裁判所から相手方に呼出状が送付されます。第1回期日は、申立てからおおむね1〜2か月後に指定されることが多いですが、裁判所の状況や事案により異なります。弁護士に依頼している場合、弁護士が同席または代理人として対応できます。ただし、裁判所から本人の出席を求められる場合もあるため、「必ず一度も裁判所に行かなくてよい」とは限りません。

STEP3 調停期日の繰り返し

調停は、通常、概ね月1回程度のペースで期日が開かれます。双方が同じ部屋で直接言い合うのではなく、別室で待機し、調停委員が交互に話を聞く形で進むことが一般的です。弁護士は、主張の整理、必要資料の提出、相手方主張への反論、調停委員への説明、合意案の検討などを行います。

STEP4 調停成立・不成立

相続人全員が合意に達すれば、調停成立となり、合意内容は「調停調書」に記載されます。調停調書には確定判決と同じ効力があり、不動産登記、預貯金の解約、株式の名義変更などの手続きに利用できます。一方で、合意に至らない場合は調停不成立となり、審判手続きに移行します。

STEP5 調停成立後の名義変更・登記手続き

調停が成立した後は、調停調書の内容に従って、不動産の相続登記、預貯金の解約・名義変更、有価証券の名義変更などを進めます。相続登記については、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請義務があります。また、遺産分割が成立した場合には、遺産分割成立日から3年以内にその内容を踏まえた登記を申請する必要があります。

遺産分割審判 - 調停が不成立になった場合

調停で全員の合意に至らない場合、遺産分割審判に移行します。審判では、裁判官が法定相続分、遺産の内容、特別受益、寄与分、各相続人の主張・証拠などを踏まえて分割方法を判断します。

審判で判断される主な内容

  • 各相続人が取得する財産の種類・割合
  • 代償分割の場合の代償金額・支払方法
  • 換価分割の場合の売却方法・売却代金の分配方法
  • 不動産を誰が取得するか、または売却するか
  • 特別受益・寄与分が認められるかどうか
  • 預貯金・有価証券・動産などの具体的な分割方法
審判への不服申立て(即時抗告):審判の内容に不服がある場合は、審判書の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告を行うことができます。即時抗告の期限は非常に短いため、審判書が届いたらすぐに弁護士へ内容を確認してもらう必要があります。

調停・審判にかかる費用と期間

裁判所費用

費用項目内容
申立手数料被相続人1人につき収入印紙1,200円分が必要です。
連絡用郵便切手・郵便料申立先の家庭裁判所により異なります。事前に確認します。
資料取得費戸籍謄本、住民票、登記事項証明書、固定資産評価証明書などの取得費用。
鑑定費用不動産評価などが必要な場合に発生することがあります。金額は事案により異なります。

弁護士費用

弁護士費用は、遺産総額、相続人の人数、争点の複雑さ、調停・審判の見通しなどによって異なります。詳しくは弁護士費用ページをご覧ください。

期間の目安

手続き期間の目安
申立てから第1回期日おおむね1〜2か月程度。ただし裁判所の状況により異なります。
調停数か月から1年以上。相続人数・争点・資料量により大きく異なります。
審判調停不成立後、さらに数か月から1年以上かかる場合があります。
全体複雑な案件では2〜3年以上かかることもあります。

費用が心配な場合でも、収入・資産などの要件を満たせば、法テラスの民事法律扶助を利用できる場合があります。利用可否には審査があるため、まずは相談時に確認してください。

弁護士なしでも調停・審判はできますか?

遺産分割調停・審判は、弁護士に依頼せず本人だけで行うことも可能です。ただし、相続人間の対立が強い場合、遺産の範囲や評価、特別受益、寄与分、使い込み、不動産の分割方法などが争点になる場合は、本人だけで適切に対応するのが難しくなることがあります。

リスク内容
不利な合意をしてしまうリスク法的な見通しが分からないまま、相手方の主張に押されて合意してしまう可能性があります。
書類作成の負担申立書、事情説明書、主張書面、証拠説明書などを準備する必要があります。
平日の期日対応調停期日は平日に開かれるため、仕事や家庭の都合と調整が必要です。
相手方に弁護士がいる場合の格差法律知識・証拠整理・交渉力に差が生じ、不利になる可能性があります。
審判移行時の対応審判では、より法的な主張・証拠提出が重要になります。

弁護士に調停を依頼するメリット

メリット内容
精神的負担を軽減できる感情的になりやすい相続問題で、相手方との直接のやり取りを減らせます。
主張と証拠を整理できる特別受益、寄与分、使い込み、不動産評価などの争点を法的に整理します。
調停委員に伝わる形で説明できる単なる感情論ではなく、証拠と法的根拠に基づいて主張できます。
合意すべき点・譲れない点を整理できる調停でどこまで譲るべきか、審判に進むべきかを判断しやすくなります。
調停から審判まで一貫対応できる調停不成立時も、同じ弁護士が審判まで対応できます。
成立後の手続きも見据えられる調停調書に基づく相続登記や預貯金解約を見据えた内容で合意できます。

よくある質問

遺産分割調停はどこの裁判所に申し立てますか?

相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。相手方が複数いる場合は、そのうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所を選べる場合があります。管轄を誤ると手続きが遅れるため、申立前に確認することが重要です。

調停に出席できない相続人がいる場合はどうなりますか?

正当な理由なく欠席が続く場合、裁判所が過料を科すことがあります。また、調停で合意ができない場合は審判に移行することがあります。弁護士が代理人として出席できる場面もありますが、裁判所から本人出席を求められる場合もあるため、事案ごとに確認が必要です。

調停はどのくらいの期間がかかりますか?

相続人の人数、遺産の種類、争点の多さによって大きく異なります。比較的シンプルなケースでも数か月から1年程度、使い込み・特別受益・寄与分・不動産評価などが争点になる場合は2年以上かかることもあります。

調停で合意できなかった場合、審判ではどのような結論になりますか?

裁判官が、法定相続分、遺産の内容、特別受益、寄与分、各相続人の主張・証拠などを踏まえて分割方法を判断します。不動産については、現物分割、代償分割、換価分割などが検討されます。どの方法になるかは事案によって異なります。

費用が心配な場合でも弁護士に依頼できますか?

収入や資産などの条件を満たす場合、法テラスの民事法律扶助を利用できることがあります。ただし、利用には審査があり、すべての方が利用できるわけではありません。まずは初回相談で費用の見通しを確認してください。

相手が連絡を無視していても調停はできますか?

可能です。相手方が任意の話し合いに応じない場合でも、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることで手続きを進められる可能性があります。住所調査や申立書類の準備が必要になるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

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