使い込まれた遺産の返還請求|
取り戻すための手順を弁護士が解説

被相続人の預金が使い込まれていた事実・証拠がある程度そろったら、次は実際にその財産を取り戻す「返還請求」の段階に進みます。

使い込みを取り戻す法的手段には「不当利得返還請求」と「不法行為による損害賠償請求」があります。相手方が任意に返還に応じれば交渉で解決しますが、応じない場合は調停・訴訟による解決を目指します。

このページでは、使い込まれた遺産を取り戻すための請求方法・手順・回収可能性の見極め方について、弁護士が詳しく解説します。使い込みの調査・証拠収集がまだの方は、まず使い込みの調査方法と証拠収集ページをご覧ください。証拠がそろっていない段階でも、弁護士が調査から返還請求まで一貫して対応します。

🚨 返還請求には時効があります。不当利得返還請求は「知った時から5年(客観的には10年)」、不法行為損害賠償は「知った時から3年(客観的には20年)」。時効完成前に請求手続きを行う必要があります。

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返還を求める2つの法的手段

使い込まれた遺産を取り戻すには、主に以下の2つの法的手段があります。状況に応じて弁護士が最適な手段(または両方)を選択します。

比較項目不当利得返還請求不法行為による損害賠償請求
法的根拠民法703条・704条民法709条
請求できる内容法律上の原因なく得た利益の返還違法行為で生じた損害の賠償(慰謝料も可能な場合あり)
相手の故意・過失不要(利得があれば請求可能)必要(故意または過失の立証が必要)
時効(主観的)知った時から5年知った時から3年
時効(客観的)行為の時から10年行為の時から20年
利息・遅延損害金悪意の受益者には利息を請求可能(民法704条)不法行為時から遅延損害金(年3%)
使い分けの目安時効が長い(5年/10年)ため実務で多く使われる3年以内で故意が明確な場合。慰謝料請求したい場合
💡 実務では時効期間の長い「不当利得返還請求」を主軸にすることが多いですが、事案によっては両方を選択的に主張します。どちらが有利かは弁護士が判断します。

返還請求の手順【4ステップ】

ステップ内容
STEP 1
返還請求額を確定する
収集した取引履歴・医療記録をもとに、返還を求める金額を確定します。「通常の生活費・医療費・介護費として説明がつく支出」を差し引き、説明のつかない出金額を請求額として特定します。
本人のための正当な支出(施設費用・医療費等)は請求対象から除きます。この線引きが説得力を左右します。
STEP 2
内容証明郵便で返還を請求
相手方に対して、内容証明郵便で返還請求の意思表示を行います。請求の法的根拠・金額・返還期限を明記します。内容証明を送ることで、相手方への心理的プレッシャーになると同時に、時効の完成を6ヶ月間猶予できます。
STEP 3
相手方との示談交渉
弁護士が代理人として、返還の金額・方法(一括・分割)・時期を協議します。相手方が使い込みを認めて任意に返還に応じれば、示談書を作成して解決します(訴訟に至らず解決するケースも多い)。
STEP 4
調停・訴訟による解決
交渉で解決しない場合、遺産分割調停の中で使い込みを主張する方法と、単独で民事訴訟(不当利得返還請求訴訟等)を提起する方法があります。訴訟では取引履歴・医療記録を証拠として提出し、裁判所の判断を求めます。
✅ 多くのケースは内容証明の送付・示談交渉(STEP2〜3)で解決します。訴訟に至るのは、相手方が全面的に否認する場合や金額に大きな争いがある場合です。

相手が使い込みを認めない場合の対処

使い込みをした相続人が「知らない」「本人に頼まれて引き出した」「生活費として使った」などと主張して返還を拒むことは珍しくありません。しかし、相手が認めなくても客観的な証拠によって立証できます。

相手方の主張弁護士による反論・立証方法
「本人が自分で引き出した」ATM取引の設置場所・出金時刻と被相続人の所在(入院先等)を照合。被相続人が物理的に引き出せない状況だったことを立証します。
「本人に頼まれて引き出した」引き出した金額・頻度が通常の生活費を大幅に超えることを示し、本人の意思に基づく引き出しとしては不自然であることを立証。委任状等の証拠がなければ主張の裏付けを欠きます。
「生活費・介護費に使った」支出の内訳・領収書の提出を求め、実際の生活費・介護費の水準を超える部分を特定。使途不明の出金を請求対象にします。
「贈与を受けた(もらった)」贈与契約書・贈与税申告の有無を確認。被相続人が贈与の意思を持てる判断能力があったかを医療記録で検証します。
「時効が成立している」時効の起算点(使い込みを知った日)を精査。相続開始後に使い込みを知ったのであれば、そこから時効を計算します。
💡 「相手が認めないから諦める」必要はありません。使い込みの立証は当事者の自白ではなく、取引履歴・医療記録などの客観的証拠の積み重ねによって行います。

回収可能性の見極め|
「請求できる」と「回収できる」は別

使い込みが立証できても、相手方に返還する資力(財産)がなければ実際の回収は困難になります。返還請求に進む前に「回収可能性」を見極めることが重要です。

回収可能性を高める要素内容
相手方に不動産がある相手方名義の不動産があれば、判決取得後に強制執行(差押え)による回収が可能です。
相手方に給与・年金収入がある給与・年金は差押えの対象になります(一定の範囲)。継続的な回収が可能です。
使い込んだ財産が残っている使い込んだ現金が相手方の口座に残っていれば、その口座を差押えて回収できます。
遺産分割との相殺相手方が他に相続する遺産がある場合、その取得分から使い込み分を差し引く(相殺する)ことで実質的に回収できます。
⚠ 相手方が使い込んだお金を既に費消してしまい、他に財産もない場合は、判決を得ても回収が困難になることがあります。弁護士が相手方の資力・遺産分割での取得分を踏まえて、費用対効果を含めた現実的な回収戦略を立てます。

遺産分割での相殺|最も現実的な回収方法

使い込みをした相続人が、他にも遺産(不動産・預貯金等)を相続する立場にある場合、その相続分から使い込み額を差し引く「相殺」が最も確実な回収方法です。相手方に資力がなくても、遺産分割の中で実質的に取り戻すことができます。

弁護士に依頼するメリット

メリット内容
返還請求額の適正な算定取引履歴を分析し、正当な支出と使い込みを区別して、法的に主張できる請求額を正確に算定します。
内容証明による強力な請求弁護士名義の内容証明郵便は相手方への強いプレッシャーとなり、任意返還を促す効果があります。
相手の反論への的確な対応「本人に頼まれた」「生活費に使った」などの反論に対し、客観的証拠に基づいて反論します。
回収可能性の見極め相手方の資力・遺産分割での取得分を調査し、費用倒れにならない現実的な回収戦略を立てます。
遺産分割との一体的解決使い込みの返還と遺産分割を同時並行で進め、相殺による確実な回収を目指します。
調停・訴訟の代理交渉が決裂した場合も、調停・訴訟で証拠に基づいた主張を行い、判決による回収を目指します。

費用対効果|費用倒れを避けるために

返還請求を検討する際、「弁護士費用をかけても回収できるのか(費用倒れにならないか)」は重要な判断材料です。当事務所では、初回相談の段階で費用対効果についても率直にご説明します。

確認ポイント内容
使い込み額の規模使い込み額が大きいほど、弁護士費用をかけても回収メリットが大きくなります。
証拠の有無・強さ取引履歴・医療記録など客観的証拠がそろっているほど、立証が容易で解決も早まります。
相手方の資力相手方に財産(不動産・預金・遺産取得分)があるほど、回収可能性が高まります。
解決方法交渉・示談で解決すれば費用を抑えられます。訴訟に至ると時間・費用がかかります。
✅ 大分みんなの法律事務所では、初回相談(無料)で「回収の見込み」と「かかる費用」を率直にお伝えします。費用倒れが見込まれる場合は正直にその旨をお伝えします。

解決実績(返還請求の事例)

内容証明+交渉で解決

長男が母の預金3,200万円を使い込んでいたことが取引履歴で判明。当初「生活費」と主張し返還を拒否。弁護士が正当な生活費・介護費を除いた2,800万円を請求額と算定し内容証明を送付。

結果交渉で2,500万円の分割払い返還・約5ヶ月で解決

遺産分割との相殺で回収

次男が父の預金1,800万円を使い込み。次男に返還する現金はなかったが、父の遺産に不動産・預金が別途4,000万円あった。遺産分割調停の中で使い込み額を次男の取得分から相殺。

結果相手に現金がなくても1,800万円を実質回収

訴訟で全面否認を覆す

相手方が使い込みを全面否認し交渉が決裂。ATM出金の設置場所が争点に。不当利得返還請求訴訟を提起し、ATMが被相続人の入院先から約40km離れた相手方自宅近くだったことを立証。入院中で外出不可だった事実を医療記録で立証。

結果約2,100万円の返還判決を得て回収

※ 上記はひな形です。実際の返還請求の事例を入手して差し替えてください。個人が特定されない範囲で記載します。

よくある質問

使い込んだ相手が財産を使い果たしてしまった場合、取り戻せませんか?

相手方に現在の財産がなくても、①相手方が他に相続する遺産がある場合はそこから相殺できます、②相手方に将来の収入(給与・年金)がある場合は差押えで継続的に回収できます。完全に回収不能なケースは限られます。まずは相手方の資力を弁護士が調査します。

返還請求は遺産分割と一緒にできますか?

できます。むしろ遺産分割調停の中で使い込みを主張し、相手方の相続分から使い込み額を差し引く(相殺する)方法は、最も確実な回収方法の一つです。使い込みと遺産分割を分けて考えず、一体的に解決することをお勧めします。

相手が「時効だ」と主張しています。もう請求できませんか?

時効の起算点は「使い込みを知った日」です。相続が発生して初めて使い込みに気づいた場合、その時点から時効を計算します。相手が「行為から10年経った」と主張しても、あなたが知ったのが最近であれば不当利得返還請求(知った時から5年)が可能な場合があります。弁護士が時効の状況を正確に判断します。

刑事告訴(横領罪など)はできますか?

使い込みが業務上横領・窃盗などの犯罪に該当する場合、刑事告訴は可能です。ただし、親族間の財産犯罪には「親族相盗例」(一定の親族間では刑が免除される特例)が適用される場合があり、刑事事件化のハードルは高いです。刑事告訴の可否は弁護士と慎重に協議する必要があります。まずは民事での返還請求を軸に検討します。

返還請求にかかる期間はどのくらいですか?

交渉・示談で解決する場合は数ヶ月程度、調停に移行すると半年〜1年程度、訴訟になると1年以上かかることもあります。相手方が使い込みを認めて任意に返還すれば早期解決が可能です。まずは内容証明の送付・交渉から始め、状況に応じて調停・訴訟を検討します。

「取り戻せるのか」「費用倒れにならないか」
——弁護士が率直にお答えします。

使い込まれた遺産を取り戻すには、正確な請求額の算定・適切な請求方法の選択・相手の資力を踏まえた回収戦略が必要です。

大分みんなの法律事務所では、初回相談(無料)で使い込みの状況・証拠・回収可能性を確認し、返還請求の方針と費用の概算をお伝えします。時効が迫っているケースは最優先で対応します。

✅ 初回相談無料 / 回収可能性と費用を率直に説明 / 内容証明・交渉から調停・訴訟まで一貫対応 / 遺産分割との相殺による回収も対応 / 大分県全域 / 法テラス利用可

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