法定相続人の範囲と順位|
誰が相続人になるのか図解で解説

相続が発生すると、まず「誰が相続人になるのか」を確認することが全ての手続きの出発点になります。「うちの家族は全員相続人になるのか」「離れて暮らしている兄弟も相続人なのか」「子どもがいない場合、誰が相続するのか」——法律では相続人になれる人の範囲と順位が明確に決まっています。これを「法定相続人」といいます。

このページでは、法定相続人の定義・範囲・相続の順位・法定相続分を、図解と具体例を交えて分かりやすく解説します。

基礎知識 2025年1月15日 公開 読了目安 約8分

法定相続人とは何か——「法律で定められた相続人」のこと

法定相続人とは、民法で定められた「相続を受ける権利がある人」のことです。被相続人(亡くなった方)が遺言書を残していない場合、法定相続人が法律の定める割合(法定相続分)に従って遺産を引き継ぎます。遺言書がある場合でも、一定の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)には「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。

⚖️ 法定相続人になれる人

  • 配偶者(常に相続人)
  • 子・孫(第1順位)
  • 父母・祖父母(第2順位)
  • 兄弟姉妹・甥・姪(第3順位)

❌ 法定相続人にならない人

  • 内縁の妻・夫(婚姻届を出していない)
  • 離婚した元配偶者
  • 被相続人より先に亡くなっている子
  • 被相続人の兄弟の配偶者(義兄・義姉等)
  • 相続放棄をした人
⚠️ 内縁の妻・夫は法定相続人にはなれません。内縁パートナーに財産を遺したい場合は、遺言書の作成が必須です。

相続の順位と法定相続分【図解】

配偶者は常に相続人。それ以外は「第1→第2→第3順位」の順で相続人になります。「順位が上の相続人が一人でもいれば、下の順位の人は相続人になれない」というルールです。例えば子どもが1人でもいれば、父母・兄弟姉妹は相続人になりません。

順位ごとの整理

  • 配偶者:常に相続人(順位なし)。法律婚の妻または夫は、他に誰が相続人になるかに関係なく、必ず相続人の一員です。
  • 第1順位:子・孫(直系卑属)。子どもがいない場合は孫・ひ孫へ。配偶者と同順位で相続。
  • 第2順位:父母・祖父母(直系尊属)。第1順位がいない場合のみ相続人になる。
  • 第3順位:兄弟姉妹・甥・姪。第1・第2順位がいない場合のみ相続人になる。

法定相続分——誰がどれだけ取得するか

相続人の組み合わせ配偶者の相続分その他の相続人の相続分
配偶者のみ全部(1/1)なし
配偶者+子1/2子全員で1/2を均等分割
配偶者+直系尊属2/3直系尊属全員で1/3を均等分割
配偶者+兄弟姉妹3/4兄弟姉妹全員で1/4を均等分割
子のみ(配偶者なし)なし子全員で均等分割
直系尊属のみなし直系尊属全員で均等分割
兄弟姉妹のみなし兄弟姉妹全員で均等分割

※ 法定相続分はあくまで「基準」であり、相続人全員の合意があれば異なる割合で分けることができます(遺産分割協議)。

具体的なケース別の相続人と法定相続分

家族構成別に「誰が相続人になるか」を確認しましょう。

ケース① 配偶者と子ども2人がいる場合(最も一般的な形)

状況:夫が死亡。妻(配偶者)・長男・長女が残された。
相続人:妻・長男・長女の3名
法定相続分:妻 1/2 長男 1/4 長女 1/4

ケース② 子どもがおらず、配偶者と両親がいる場合

状況:妻が死亡。夫(配偶者)・義父・義母が残された。子どもはいない。
相続人:夫・義父・義母の3名(第2順位の直系尊属が登場)
法定相続分:夫 2/3 義父 1/6 義母 1/6

ケース③ 子どもも両親もおらず、配偶者と兄弟がいる場合

状況:夫が死亡。妻(配偶者)・夫の兄・夫の妹が残された。
相続人:妻・夫の兄・夫の妹の3名(第3順位の兄弟姉妹が登場)
法定相続分:妻 3/4 兄 1/8 妹 1/8

ケース④ 独身で子どもがなく、両親も死亡済みの場合

状況:独身男性Aが死亡。Aの両親はすでに死亡。Aには兄と妹がいる。
相続人:兄・妹の2名(配偶者なし、第3順位が登場)
法定相続分:兄 1/2 妹 1/2

ケース⑤ 子どもが被相続人より先に死亡している場合(代襲相続)

状況:父が死亡。母はすでに死亡。長男は父より先に死亡しており、長男に子ども(孫A・孫B)がいる。次男は健在。
相続人:次男・孫A・孫Bが相続人(長男の代わりに孫が「代襲相続」)
法定相続分:次男 1/2 孫A 1/4 孫B 1/4(長男の取り分1/2を孫A・Bで均等分割)

代襲相続とは、相続人となるはずだった人が相続開始前に死亡していた場合に、その人の子(孫・ひ孫)が代わりに相続人になる制度です。

よくある疑問——特殊なケースの相続人

「この人は相続人になるの?」と迷いやすい特殊ケースを表にまとめました。

状況相続人になるか・相続分
離婚した元配偶者相続人にならない。離婚した時点で法律上の配偶者ではなくなるため、相続権は消滅します。
離婚した元配偶者との間の子相続人になる。子どもは被相続人の実子であるため、離婚後も相続権は変わりません。法定相続分も他の子と同じです。
再婚相手の連れ子(養子縁組なし)相続人にならない。法律上の親子関係がないため相続権がありません。相続させたい場合は養子縁組が必要です。
養子(養子縁組をした子)相続人になる。法律上の実子と同じ権利があります。法定相続分も実子と同じです。
婚外子(非嫡出子)相続人になる。2013年の最高裁決定・民法改正により、婚外子も実子と同じ法定相続分となりました。
内縁の妻・夫相続人にならない。婚姻届を提出していない内縁パートナーには相続権がありません。
胎児(まだ生まれていない子)相続人になれる。相続については、胎児はすでに生まれたものとみなされます(民法886条)。ただし死産の場合は相続人になりません。
相続放棄した人相続人でなくなる。相続放棄をした人は初めから相続人でなかったものとみなされます。代襲相続も発生しません。
兄弟姉妹の代襲相続甥・姪まで。再代襲(甥・姪の子まで)は兄弟姉妹の代襲相続では認められません。

相続権を失うケース——相続欠格と相続廃除

法定相続人であっても、一定の事由がある場合は相続権を失うことがあります。「相続欠格」と「相続廃除」の2つです。

制度内容主な原因
相続欠格(民法891条)法律上の要件に当てはまった場合に、当然に(自動的に)相続権を失う。裁判や申立ては不要。① 被相続人・先順位相続人を故意に死亡させた ② 相続に関する不正行為(遺言書の偽造・破棄など)
相続廃除(民法892〜895条)被相続人が家庭裁判所に申立てることで、特定の相続人から相続権を剥奪する制度。遺言書でも指定可能。被相続人への虐待・侮辱・著しい非行があった場合。遺留分のある相続人(配偶者・子・直系尊属)のみ対象。

※ 相続欠格・廃除となった人の子どもには代襲相続が認められます(相続放棄の場合は代襲相続なし)。

法定相続人が誰もいない場合はどうなるか

法定相続人が誰もいない(または全員が相続放棄した)場合、被相続人の財産は以下の流れで処理されます。

  1. STEP 1:家庭裁判所への「相続財産管理人(清算人)」の選任申立て。利害関係人(債権者・特別縁故者など)または検察官が申立て。
  2. STEP 2:相続財産管理人が財産の調査・債務の弁済・遺贈の履行などを行う。
  3. STEP 3:「特別縁故者(内縁の配偶者・療養看護した人など)」が家庭裁判所に申立てた場合、財産の全部または一部が分与されることがある。
  4. STEP 4:残った財産は国庫(国)に帰属する。
「内縁の配偶者」は法定相続人にはなれませんが、特別縁故者として財産分与を申立てることができます。ただし申立ては相続財産清算人の選任後3ヶ月以内という期限があります。

法定相続人に関するよくある質問

相続人は何人まで認められますか?

法律上、相続人の人数に上限はありません。子どもが10人いれば全員が相続人になります。ただし相続人が多いほど遺産分割協議の合意が難しくなります。また相続税の計算では養子は一定人数(実子がいる場合は1人、いない場合は2人)までしか相続人としてカウントできません。

相続放棄をすると子どもへの代襲相続はありますか?

ありません。相続放棄は「初めから相続人でなかったもの」とみなされるため、代襲相続は発生しません。これは相続欠格・廃除と異なる重要な点です。「親が放棄したから子が代わりに相続できる」とはなりません。

被相続人に認知した子(婚外子)がいます。相続分はどうなりますか?

2013年の民法改正以降、婚外子(非嫡出子)と嫡出子の法定相続分は同じです。認知した子は嫡出子と同等の相続権を持ちます。ただし相続人の存在を知らなかった場合は後から遺産分割のやり直しが必要になることがあります。

子どもが全員相続放棄した場合、次は誰が相続人になりますか?

子全員が相続放棄すると、第2順位の直系尊属(父母・祖父母)が相続人になります。直系尊属も全員放棄した場合は第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。ただし相続放棄の場合、下の順位の方にも相続が回ることを知らせるのが親切です。

養子は何人まで相続人にできますか?

民法上、養子縁組の人数に制限はなく、何人でも養子縁組できます。ただし相続税の計算では「法定相続人の数」に算入できる養子の数は制限されています(実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人まで)。

法定相続分と異なる割合で遺産を分けることはできますか?

はい。法定相続分はあくまで「話し合いがまとまらなかった場合の基準」です。相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合・方法で遺産を分けることができます(遺産分割協議)。ただし全員の合意が必要なため、一人でも反対すると法定相続分が基準となります。

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法定相続人の確定は、全ての相続手続きの出発点です。「相続人が何人いるか」「全員を把握できているか」を正確に確認した上で、遺産分割協議・相続登記・相続税申告を進める必要があります。

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